イギリスの経済学者は言う。
“人には、働かない事に対する、恐れがある”
“働かない事は、余暇ではなく、失業と捉えられる”
“人々にとって働かない事は、所得が減り、生きがいがなくなることと同じだ”
“仕事でアイデンティティーを得ている人が多いから、大きな問題だ”
“仕事を減らす自動化が進む一方、人々は、どうすべきか?”
“働かない事は、人々を解放するのか?”
“それとも、生きる意欲を喪失させるのか?”
“大きな問題だからこそ、誰も正面から向き合おうとしない”
“予測では、今、存在している仕事の4~5割が、機械に代替される”
“長期的には、人々の労働時間は減って、週20~25時間になるのだろう”
“それは、ケインズが、1930年代に予想した事だ”
“彼らの所得は、どうなるのだろう?”
“労働時間が短い事で、所得が減るなら、反対されるだろう”
“だから、代わりになる所得が必要になる”
“1つの案は、ベーシックインカムだ。 全ての人に、無条件で基本給を配る”
オランダのジャーナリストは言う。
“アメリカの歴史の中で、誰もが忘れている、ある逸話があるんだよ”
“実は、ニクソン大統領は、70年代のはじめ、ベーシックインカムを施行させる
寸前だった”
“当時、ほとんど誰もがベーシックインカムが施行される事を信じ切っていた”
“有名な左派の経済学者ガルブレイスも賛成していたし、右派で新自由
主義者のフリードマンも賛成していた”
“誰もが支持していたからニクソンは、僕が大統領になったら実行するとね”
“彼の提案は、2度、議会を通過した”
“だが民主党は、もっと高いベーシックインカムにすべきだと主張して、折り
合わなかった。 2度ともね”
“もう1つの歴史の皮肉は、アメリカで行われたベーシックインカムの
社会実験だ”
“結果は、文句のつけようがなかった”
“社会保障費は下がり、犯罪は減少し、子供の成績は上がり、人は労働を
やめなかった”
“だけど、ただ1つ、離婚率は上昇した。 50%ほどね”
“すると共産党など保守派は、皆、ベーシックインカムは採用しないと決めた”
“女性が、より独立してしまったら、男性は、良い結婚生活を送れなくなる、
ダメだとね”
“こうしてベーシックインカムは、アメリカで忘れ去られる事になった”
“だが、わずか10年後、ある研究者が、当時の統計の誤りを発見した”
“離婚率は上昇してなかった。 時すでに遅しだ”
“偶然が絡み合った、奇妙な歴史だ”
“もしもアメリカがベーシックインカムを採用していたら、影響は計り知れな
かっただろう”
アメリカの電子決済サービス企業戦略担当者は言う。
“水は、公共の資源だよね? 蛇口をひねれば、水が出てくる”
“人は、いくらかのお金を払って、水会社から水を使わせてもらう”
“公園や空気もそうだよね? なぜ、お金だけは、そう、ならないんだろう?”
“お金は、今、銀行から配られているよね?”
“お金を借りられるかどうかを、銀行員が決めるのは、本当にフェアかな?”
“未来は、きっと、政府がお金を全部持っていて、誰でも、そこから、直接、
お金を引き出せるようになるかもね”
“皆が、ユニバーサルインカムのクレジットカードを持っているんだ”
“誰もが、年に5万ドルを貰えて、いくらかのルールのもと、使用できる”
“自動化で仕事が減る社会では、富を生み出すために、皆が働く必要は
なくなる”
“結局、自由に使える時間こそが富だ。 まさに、有限の貨幣だからね”
“自由な時間ほど、豊に感じるものはない。 それこそ、自由な人間だ”
フランスの経済学者は言う。
“シュンペーターは、資本主義は生き残れるか?と、尋ねられ、生き残れない
だろうと答えた”
“その理由は… 単純に言えば、官僚的なプロセスのせいで、資本主義に
必要な起業家精神が、失われると考えたからだ”
世界を覆いつくした資本主義。 成功ゆえに、失われるもの。
成功ゆえに、生まれる裂け目。 それは、何なのか?
ドイツの経済ジャーナリストは言う。
“現代資本主義の世界では、巨大コンツェルンが原料から販路まで、全てを
コントロールしている”
“コンツェルン同士は競争関係になく、時に、協力関係すら築いている”
“どんな産業でも、売り上げの大半が、数社の巨大企業に偏っている”
“競争というものは、実際には、存在していないのよ”
“例えば、ある経営者が、複数の企業を渡り歩く事が多いでしょう?”
“あるいは、執行役員の後に、監査役になったりね”
“さらに、複数の企業の監査役を、兼任することもある”
“監査役同士が、同大学出身の旧知の仲だったりもする”
“そうした状況では、競争原理など、働くはずがないわ”
“いわば、村のような狭いところで、意思決定がなされる”
“エリートの、お友達集団なのよ”
アメリカの経済学者は言う。
“シリコンバレーで働く人たちの多くは、創造性を発揮することに、やりがいを
感じているようだが、公平を期すために言うと、彼らは税金を逃れている”
“彼らは税金回避にとても熱心で、世界各国で課税を逃れている”
“タックスヘイブンを利用し、世界中で得た利益を、税率の低い地域に移して
いるのだ”
シュンペーターは、書いた。
資本主義は、その成功ゆえに、土台である社会制度を揺さぶり、自ら存続
不能に陥る。
社会主義へと向かう状況が、必然的に訪れるのだ。
イギリスの経済学者は言う。
“資本主義というのは、資本を蓄積する仕組みだが、それが、もはや、重要
ではなくなった時、資本主義のシステムはなくなる”
“必要とされなくなり、消えるのだ”
“それは、政府が経済の所有と管理を行う社会主義ではなく、儲けるという
モチベーションが、重要じゃなくなる世界のことだ”
ドイツの経済ジャーナリストは言う。
“資本主義が、非常に魅力あるシステムは明らかよ”
“人類が初めて発明した、経済成長を生み出すシステムだものね”
“でも、資本主義は成長を生み出すけれど、残念ながら永久に成長し続ける
ことは出来ないのも事実よ”
“いずれ、資本主義が崩壊するのが先か、私たちが資本主義から抜け出る
道を見つけるのが先か、どちらかね”
ドイツの哲学者は言う。
“かつて私たちは、資本主義の代替案が、あるだろうと考えていた”
“モノの生産と消費に関する理論が、たくさんあった”
“だが、その全てが誤っていた事が、技術の進歩の歴史によって証明された”
“資本主義は、さらに多くの矛盾を生み出し、人類を滅ぼしかねない”
“現在、起きている事についてのマシな理論を立てないと人間世界の滅亡は
いつか本当に、やって来るだろう”
フランスの経済学者は言う。
“今の世界に名前を与えるならば、まさに、デジタル社会だ”
“物や機械を相手にする世界から、人を相手にする世界に移って行くはず
だった”
“ようやく、人間的な世界が、訪れるかも知れないとね”
“だが、デジタル社会は、そうじゃなかった”
“問題を解決するために、魔法の杖など無い”
“手っ取り早い解決案に、騙されてはならない”
光を追い求めるうちに、闇を忘れ去ったのか?
まるで、リンゴを高く売ることに夢中になって、リンゴの味を忘れたかの様に。
チェコの経済学者は言う。
“シュンペーターは、言い当てていた”
“資本主義は、批判を受け入れられる唯一のシステムだとね”
“この世界は、どうにか機能している”
“でも、それが、なぜ、機能しているのか? 実は、よく分からない”
“物理も同じだ。 現象の細部まで、全てを説明できる完璧な理論はない”
“資本主義は、ある程度までは機能するが、完璧ではないという事に、いつも
注意を払うべきだ”
“現在の世界について、確実な事は、誰にも分からないのだ”
数字のゲームから、誰も逃れられない。 だが、ゲームにはルールがある。
ルールを決めるのは、時代の私たちの欲望である。
今夜も、ルールは書き変えられて行く。 欲望の資本主義。