ここは、ニューヨークの高級寿司店です。
メニューは、Aコース10,700円、Bコース14,000円、Cコース16,000円。
さて、ここで、クイズです。 あなたなら、次の3つのうち、どれを選びますか?
みなさん、一斉に B を選びましたね!
じつは、A・B・Cと、メニューが3種類あると、5割以上の客が、真ん中のBを
選ぶのが多いそうです。
これは、極端回避性と呼ばれる、人間心理なのです。
そこで、ニューヨークにある実際の高級寿司店で、今までコース1種類だった
のを3種類に増やしたところ、売り上げが25%増えたそうです。
この行動経済学とは、人間の本質を逆手にとっている。
また、セイラーさんは、行動経済学にもとづいた戦略を提唱している。
それを、ナッジといいます。
ナッジとは、英語で、ヒジで小突くという意味合いです。
例えば、私たちが寄付をしたいとか、環境問題に優しくしたいと思っても、
なかなか実行出来ないものです。
その良い気持ちを、後押ししてあげるという事に使えるのです。
この原理が分かれば、社会を良くする事に繋がるのである。
このナッジを取り入れ、大きな成果を上げている国があるのです。
その舞台はイギリス。 じつは世界でも、行動経済学の先進国である。
イギリスといえば、伝統的の、こちら。
午後にお茶と軽食を取る、アフタヌーンティーだ。 優雅なひととき。
だが、紅茶に砂糖を、たっぷり…。 一緒に、甘いスイーツも、たっぷり…。
さらに、スコーンにマーガリンとジャムを、たっぷり…。
お客は、言う。 “砂糖を取り過ぎだけど、気にしないよ”
そして夜には、ビールで乾杯!
そこに欠かせないのが、イギリス名物、フィッシュ&チップスだ。
“揚げ物だし、健康的じゃないのは分かっているわ”
じつはイギリス、EU諸国の中で、肥満率が極めて高い!
2050年には、人口の半分が肥満になると推測されている。
そんな中、最近、人気となっているのが、ビッグサイズの洋服店。
サイズは、なんと、8XL? こちらは、もはや、サイズ不明…?
右肩上がりのオーバーサイズ市場。
しかし、その一方で、医療費も右肩上がりになっていた。
国民保険サービス(NHS)担当者は、言う。
“イギリスの肥満は、深刻な問題です”
“国の肥満対策や糖尿病対策の費用は、年間約7000億円にも上ります”
行動経済学で、肥満改善できるのか?
取り組みを始めたのが、リバプール。 あのビートルズの生まれ故郷だ。
コンビニのドリンク売り場をのぞいて見ると、そこには見慣れないハイシュガー
の文字があった。
糖分が高い飲み物に、赤いポップを表示して、警告を促しているのだ。
買いに来るお客さんを観察していると、甘い飲み物を1度手にするが、チラリと
ポップを見てやめ、別の飲み物を選んだ。
お客は、言う。 “ポップがとても目立って助かるわ”
“糖分が高いのは、できるたけ避けたいの”
こちらの男性も、ポップを見て、違う飲み物を手にした。
男性は、言う。 “あのポップが見えたから、やめたんだ。健康のためにね”
子供まで、糖分の少ない飲み物を選んだ。
子供は、言う。 “将来、スポーツマンになりたいからね”
“今から、糖分には気を付けているんだよ”
実証実験は、効果てきめん!
糖分の高い飲み物は減ったが、店の全体の売り上げは落ちなかったのだ。
じつは、この取り組みに、セイラーさんが協力していた。
当時のイギリスの首相の肝いりの政策となった。
行動経済学は、社会問題の解決にも役立つという。
セイラー教授は、言う。
“社会問題の原因の多くは、人間の行動によるものです”
“その多くは、無意識にやってしまっています”
“人間の行動を変えるには、ナッジ、ちょっとした後押しが以外にも有効なの
です”
2010年に、イギリス政府のもとで世界初となる、行動経済学を社会問題に
活用するチームBIT英国ナッジユニットが発足。
これまで、500以上もの実証実験が行なわれている。
英国ナッジユニットのCEOは、言う。
“行動経済学のさまざまな要素から、新たな問題の解決法を探り、確立して
来ました”
“予算をかけずに、非常に高い効果を上げています”
その、行動経済学を使った取り組みが行なわれている、南部のブライトン。
道路を走っていると、突然、目の付いたポスターがあった。
スピード違反を抑制するポスターだ。
見通しが良く、スピードを出し過ぎてしまう道路にポスターを設置した事で、
9割のドライバーが効果アリと答え、平均10キロの減速に繋がったという。