FC2 トラックバックテーマ:「思わず買ってしまった!ムダなもの、変なもの」2019年9月、三重県の津市。
町の中心部から車で10分ほど走ると、突然、畑の中にシマ模様の建物が…。
ここは、通称… レオパレス銀座。
10年ほど前は、田畑だった1キロ四方の場所に、賃貸住宅大手のアパートが
40棟近く建っています。
そのうちの1棟を所有する男性は、電機メーカーの社員だった14年前、親の
土地にアパートを建てました。
“当時はサラリーマンだったから、おんぶにたっこに肩車の状態で…”
“まぁ、それで儲かるなら、ラッキーという感じでしたね…”
男性の心を動かしたのは、アパートを建ててくれれば、私たちが丸ごと借り
上げて、家賃も保証します… という、営業マンの言葉でした。
建設費は、38部屋で、約2億2000万円。
そのほとんどを、金融機関から借りています。
ところが、人の気配が全くしない…。
“今、入居の募集をやめているので、ほとんど空っぽです…”
建物に、重大な欠陥がある可能性があり、入居者に、出て行ってもらったと
いうのです。 問題が明るみになったのは、2年前。
手抜き工事による、大規模な違法建築でした。
屋根裏を仕切る壁がないなど、施工不良が見つかった建物は、1万3600棟。
利益最優先の企業体質が生んだと、指摘とれています。
賃貸住宅大手が補修工事を行うと発表して1年以上経っても男性のアパートは
調査の日取りさえ決まっていませんでした。
“まず、チェックをすれば、施工不良は出るはず…”
“賃貸住宅大手も大手だけど、オーナーもバカだと… 全く、その通りだと…”
この10年、老後の収入・相続税対策などの理由で、多くの人々が、業者に
おまかせのアパート経営に乗り出しています。 その数、およそ420万戸。
その一方で、賃貸アパート経営に関するトラブルは、年々、増え続け、消費
生活センターに寄せられる相談は、10年で4倍以上に。
弁護士は、言う。 “収益の見込みが非常に甘い”
“ずさんな計画を見せて、これで大丈夫ですと、買わせる。ローンを組ませる”
“最悪、ローンを抱えて破産せざるを得ない…”
増え続けるアパートのトラブルを受け、国会でも…。
“話しが違う。 説明を受けていなかった。 こういう事が、なぜ起こるのか?”
“業者と家主の間で家賃保証を巡るトラブルなどが、多発しています”
“賃貸住宅管理業の適正化につなげて行きたい”
人口減少社会に突入した日本。
借りる人の数は減っているのに、アパートは増え続けて来ました。
今、何が起きているのか?
番組では、全国のアパートオーナーや不動産関係者を取材しました。
老後の安心を得ようとアパートを建てたもののローンが払えなくなった高齢者。
家賃の大幅なダウンを突如、通告され、業者に立ち向かう決意をしたオーナー。
“同じ境遇の方と一緒に、戦って行く…”
そして、リスクが大きい事を知りながら、アパートを売り続けて来た事を悔やむ
元社員。
夢のアパート経営をめぐり、時代の波に翻弄された人々の姿を追いました。
老後の安心を求めて建てたけれど…。
年金問題で将来に不安が広がる中、高齢者も賃貸アパート経営に乗り出して
行きました。
86歳の女性は、子供に資産を残したいと考えていた夫のもとに、営業マンが
訪れるようになったのは、8年ほど前でした。
“1カ月に50万円… 1年で、これくらいになると…”
“これは終身まで入りますよと、そういう言い方でした…”
“だから土地を、ただ遊ばせておくのは、もったいないでしょう?”
“私は、ダメだと言ったのです… もう、歳だから…”
しかし夫は、次第に営業マンの話しに乗り気になり、ついに契約。
埼玉に所有する土地にアパートを建て、翌年は東京にも。
面倒な事は、全部、業者に任せられるサブリース契約にしました。
これで余生は安泰かと思われたのですが…。 夫が事故で車いす生活に。
介護施設に入る事になり、まとまったお金が、急に必要になったのです。
そこで、サブリース会社との契約を打ち切り、東京のアパートを売却。
当座のお金は工面できました。
しかし埼玉のアパートは、全く売れるメドが立たないというのです。
86歳の女性は、この日、地元の不動産会社の男性と、アパートの様子を見に
来ました。 6つの部屋のうち、4部屋が空室の状態。
まだ、築7年。 なぜ、入居者が現れないのでしょうか?
86歳の女性のアパートの最寄り駅は、東京の八王子と群馬の高崎を結ぶ、
JR八高線の金子駅。 都心に通う人には、かなり不便な場所です。
更に、町の中心部とは反対側の茶畑が点在するエリアにあり、徒歩圏内に
コンビニやスーパーがありません。
家賃相場を見ると、金子駅周辺は、2LDKで平均5万6000円。
入間市の他の駅に比べて、とりわけ家賃が安いエリアなのです。
86歳の女性のアパートの2LDKの家賃は、月5万円。
金子駅周辺の平均より、6000円も下げています。
更に、1カ月目の家賃は、タダという特典も。 しかし…。
地元の不動産会社の男性は、言う。
“それでも、なかなか… ここを見たいと言うお客さんが少ない状況ですね…”
“建物はキレイでも、やっぱり、利便性が…”
“そもそも、ここに、アパートを建てるべきだったのか?と…”
“とにかく、満杯にしないと、売るにも売れない状況なので…”
“僕からすると、賃料を下げてでも、満杯にしたい…”
残る5600万円の借金を返せる当てもなく、アパートを売ろうにも売れない。
出口の見えない日々が続いています。
86歳の女性は、言う。 “今だって、5000円しか持っていないです…全財産”
“もう、本当に、考えるのもつらい… つらいしかないです…”
老後の安心を求めてアパートを建てた、年金生活者たち。
こうした人たちに、なぜ、アパート経営が可能になったのでしょうか?