安心のアパート経営のはずだった…。
茨城県に住む男性は所有する5棟のアパートの内、1つの家賃収入が大幅に
下がり、困っていると言います。 このアパートを建てたのは、12年前。
費用のほとんどを、銀行からの融資で賄いました。
“すぐ満室になって、最初の10年間は、ちゃんと収支は合っていた…”
“ちょうど10年目に家賃の改定があって、大幅な家賃の値下げがあった…”
男性は、大手の賃貸住宅建設会社と、サブリースという契約を結んでいます。
サブリースとは、オーナーが建てたアパートを、サブリース業者が、丸ごと借り
上げて、入居者に、また貸しする仕組みです。
大手の会社では、アパートの建設から、入居者の募集や管理まで、全て請け
負います。 男性の場合、新築から10年間、家賃を保証されていました。
“これが、改定の時に渡された書類…”
迎えた10年目、家賃が見直されました。 これは業者が示した新たな家賃表。
新築時は、6万3000円だった家賃が、5万円に。
10年で、20%以上、下がり、他の部屋も、軒並み減額されたのです。
男性は、家賃の値下げを、全く想定していなかったと言います。
これは、契約時に業者が提案した、事業試算書。
“1番、最初に、家賃は、ずっと下がる事はないと言われた…”
そこには、35年後まで変わらない家賃収入が見込めると書かれていました。
ところが、下の方には… 家賃が変更になる可能性について、ただし書きが。
男性は、念のため、確認したと言います。
“ここが1番、心配だったから、本当に家賃、大丈夫なの?と聞いた…”
“そしたら、大丈夫だ。 徒歩圏内にスーパーがあるし、大きな薬局もあるし、
コンビニが近々オープンするから心配ないと。立地がいいから大丈夫だと…”
“担当者も支店長も、これは悪まで形だけだから、心配いらないと言われた”
ところが、周辺でもアパートの建設が相次ぎ、家賃相場は下落。
男性の家賃も減額されました。 大幅に下がった家賃収入。
“今は435万円で、10年目で、年間100万円ぐらい、1回で下がりました…”
ローンの支払いや税金、保険料などを差し引くと、赤字になる計算です。
“このまま行くと、赤字になってしまう… 何とかして下さいとお願いしたら、
そういう人、いっぱい、いますよ! という回答だった…”
番組では男性と契約した会社にリスクを、どの様に説明したのか尋ねました。
回答は→ 今回の取材対応については控えさせていただきたく存じます。
というものでした。
男性が、賃貸アパート経営に乗り出したキッカケは、母親の介護でした。
93歳になる母親は認知症に加え腰痛がひどく歩けなくなり、今は介護施設で
暮らしています。
もともと重度の骨粗しょう症で、腰痛に悩まされていた母親。
70代後半にさしかかった頃から、ガスの火を切り忘れるなど、認知症の兆候も
出始めました。 当時、東京で食料品店を経営していた男性。
父と弟は既に他界しており、独身だっ男性が、母を付きっきりで介護するため
店を手放し、実家に戻る事に。
“東京の仕事を辞めて来たから、収入がなくなるので、アパートがいいかなと
思って…” 2004年、アパート経営が始まりました。 建設費は、3700万円。
東京で、コツコツ貯めたお金を、全て、つぎ込みました。
アパート経営は、素人の男性。
業界最大手の会社に、全てを任せる事にしました。
“ずっと満室で、約束通り入金があったので、さすがだなと思いました…”
手応えを感じた男性は、2年後には自宅も取り壊し、次のアパートを建設。
その後も、さらに3棟を、銀行からの融資で建てました。
それが2年前、突如、暗転。
所有する1棟が、大幅な家賃の下落で、赤字に転落する事に。
合わせて1億6000万円の返済に、行き詰まる恐れが出て来たのです。
“どうやって返すって… 実際、返せないですよね…”
“自分が入っている銀行ローンは、自分が亡くなれば、全額返済になります”
“ですから、もう… 道がないですよね…”
男性のように、業者に全て任せるサブリースのアパートは、全国に、およそ
420万戸。 その数は、10年で2倍近くに増えています。
サブリースのトラブルを多く扱う弁護士です。
最近、増えている相談が、家賃の減額をめぐるトラブルだと言います。
“契約した時は、ずっと賃料保証ですよという約束だったはずなのに、途中で
賃料を下げて来る”
“ひどい場合には、賃料の減額をオーナーがのまなければ契約は解除します
と契約書に盛り込んであったりするのです”
“そうするとオーナーは、大幅な賃料減額の要求をのむか、サブリース業者が
撤退するのを甘受するかという事になってしまうのです”
“もう、ローンを抱えて破産せざるを得ないと、覚悟する人もいます”
サブリースのアパート経営が脚光を浴び始めたのは、80年代後半。
業者は、都市近郊の地主や農家を回り、余った土地にアパートを建てれば、
副収入が得られるとして、営業攻勢をかけました。
時は、バブル景気の真っ只中。
右肩上がりの土地神話を背景に、賃貸アパート経営は、財テクの一種として
もてはやされました。 しかし、バブルは崩壊。
不動産投資ブームは一気にしぼみ、賃貸アパートビジネスも下火になるかに
見えました。 そこに神風が! 1991年、生産緑地法の改正です。