FC2 トラックバックテーマ:「生活の知恵を教えてください」‘では、それに関して、大統領の貿易政策を、どう評価されますか?’
‘大統領の政策は、共和党の従来の貿易政策と比べても、標準的とは言えま
せん’
‘少なくとも大統領は、自由貿易をある程度制限する事により、偉大なアメリカ
を復活させようとしているようです。 これを、どう…’
共和党の経済政策は、良くないと思っていました。
新しい大統領が現れて、ここまで悪い政策を作れるのか…と思いました。
以前よりも、もっと悪くなっています。
なぜかと言うと、我々に必要なのは、ルールのある世界です。
法の支配なくして、経済は機能しません。 世界経済も同じです。
法の支配が必要です。
WTO(世界貿易機関)が、法の支配の基本となっていました。
どう刷新するかの詳細については、意見が分かれる事もありますが、それに
しても法の支配は必要です。
新しい大統領は、この法の支配を壊そうとしているのです。
それが、カオスや不確実性をもたらしています。
大統領には経済の知識が全くないので、彼のやり方は、彼が助けると言って
いるグループの人々を、実際には困らせているのです。
その1つの例として、製造業の仕事がアメリカに戻って来る事はありません。
非常に高い関税を中国にかけたとして、製造業はベトナムやバングラディシュ
スリランカ等に移るだけです。 サウスカロライナに移る事はありません。
少しだけアメリカに戻って来たとしても、その時、製造業を担うのはロボットです。
ですから多くの雇用を生む事がないばかりか、失業した人々に職が戻る事は
絶対にないのです。 製造の場所が変わり、必要なスキルも変わります。
‘日本の製造業が発展した時、多くのモノを輸入しました’
‘アメリカからは自動車、西洋諸国からは多くの技術を輸入しました’
‘当時の基本的な手法は、ある意味それらのモノを真似して同じモノの製造を
試みるというもので、その後、新たな特徴や改良を加えるようになりました’
‘ですが真似する手法を使わず私たちが何かオリジナルのモノを創り出したり
日本の文化や日本の社会習慣から新たなヒントを見つけたりする事は出来る
のでしょうか? 日本の社会習慣と、アメリカのそれとは、だいぶ異なります’
日本に関して、私は、非常に楽観的です。
日本の貢献に関する特徴的な面を、日本人は、十分理解できていないのかも
知れませんね。 例えば、日本の製造業はスケジュール通りです。
日本の自動車業界の生産性は、確実にアメリカより上のはずです。
アメリカは、大元の発明をしたかも知れませんが、日本はアメリカ以上に良い
モノへと改良したのです。 それが1つの側面です。
30年、40年後に我々が住む惑星で、どんな経済や社会を実現したいかと考え
た時に、どのように自分たちの価値観と合うように、それを実現するのか?
日本には、それを明確に発言する、非常に強力なリーダーや有識者がいま
したよ。
私の先生でもある宇沢弘文(経済学者)は、社会資本や実現にあたっての
社会の役割について話してくれました。
※ 宇沢弘文→専門は数理経済学。東京大学名誉教授。(1928-2014)
そして彼は、アメリカの経済学者の中で、大成功した最初の日本人経済学者
ながら、さまざまな限界に気付いていました。
彼がアメリカを去った1つの理由は、自分の子供たちに、そのような環境で
育ってほしくなかったからです。
ですから、こういった事が日本文化の一部で、問題は、どのように今それを
21世紀に適応させるかです。
‘株主資本主義の話しが出ましたが、伝統的な日本の習慣を思い出しました’
‘三方よし、という、三方に利益があるようにするわけです’
‘一方は買い手、もう一方は売り手、もう一方は社会です’
‘全ての利害関係者に良いようにするのです’
‘これが一種の、日本企業の伝統的な習慣です’
‘ですが今では、現代的な日本企業の大半が、株主資本主義を採用しようと
していますが、名案ではないかも知れませんね’
アメリカのビジネス・ラウンドテーブルのほとんど全員が、ステークホルダー
(利害関係者)資本主義を採用する事に最近、合意しました。
株主資本主義が機能しなかったからです。
これに関する1つの見方は、企業はコミュニティだという事です。
人々が生産をすべく、共に働くコミュニティです。
コミュニティとして企業は、コミュニティの全てのメンバーの役に立たねばなり
ません。
つまり従業員と株主、貸付機関、それに自分たちの職場があるコミュニティや
客の役にも立たねばならないのです。
これは1970年代と1980年代に、ミルトン・フリードマンが推進して、実際に
法律まで変えるに至った考え方とは、異なる考え方です。
‘ええ、確かに、あなたがおっしゃった通り、宇沢弘文は共同体の重要性を
説いていましたね。もちろん社会だけでなく社会的共通資本の重要性もです’
‘彼は、時代の先を行き過ぎていたのかも知れません’
確かに彼は、時代の先を行っていました。
市場での合理性だけを一人歩きさせる経済理論に疑問を呈し、資本主義の
新たな進化の道を模索する、コロンビア大学教授でもある経済学者。
そのビジョンから、私たちは何を学ぶべきか?
今、不確実性の時代に突入したかに見える世界。
欲望の資本主義の探求は続く…。