FC2トラックバックテーマ 第2112回「見慣れない出来事」芸術作品が取引きされる市場規模の大きさを国別に比較したものです。
最も大きい市場があるのは、アメリカです。
2位はイギリスなのですが、実は中国が、そのイギリスに並ぶような勢いで今
成長しているという事なのです。
当然、世界第2位の経済大国の中国が経済でそこまでいって文化をやらない
わけがなく、美術によって色んな人に親近感を抱いてもらったり。
そこから1つの美術館がある事によって、そこに世界中から観光客が来て、
お金を落とすとか。
ある意味で文化というのは1つの国安全保障上の大事な部分もあるのです。
一方で、日本の市場世界の中で、どんな位置にあるかというと、その他の
6%の中の、たった1%以下しかないといわれているのです。
なぜ、こんなにも日本の市場規模は小さいのか?
そこには、日本が抱えている課題がありました。
日本の現代アートの現状を危惧するアーティストがいます。
彫刻家の男性です。 鹿のはく製を、透明な球体で覆った作品。
シリコーン・オイルの泡が織り成す、不思議な空間を体感する作品。
ユニークな素材を駆使する作風が、海外で高く評価されています。
彫刻家の男性は、日本には、アメリカのように若い才能を、チームで育てる
仕組みが、十分整っていないと考えています。
“アーティスト・評論家・ギャラリー・美術館・美術の大学、全部、有機的に
つながっている世界だと思うのです”
“その循環が、まだ少し、うまく行っていないのかなと感じます”
“ギャラリーが、もう少し強くなった方がいいと思いますし、アーティストが、より
強気で勝負できる環境というものを、周囲が支援して行く事は、非常に必要
だと思います”
日本にも、草間彌生さんや村上隆さん等、国際的に活躍する現代アーティスト
はいます。
しかし、いずれもアメリカに渡り、自力で作品をアピールし、成功をつかんで
来ました。
日本の多くの現代アーティストが、チャンスをつかみづらい現状を、どう変えるか?
文化庁主催のシンポジウムが開かれました。
美術館の副館長やギャラリー経営者など、出席者からは日本の現代アートの
現状について厳しい指摘が相次ぎました。
美術館の副館長は、言う。
“極端な話しをすると、日本がなくても、現代アート界はまわっているので、
東南アジアに行ってもそうですよ”
“みんな各国の若い世代の人たちが、英語で会話していて、ここに日本の
存在感は無いというのを、行くたびに思います”
このシンポジウムを企画した、文化庁の課長補佐の男性。
文化財の保護を主な仕事として来た文化庁は、今、日本の現代アート市場の
活性化と国際発信に取り組もうとしています。
“このままだと、もう、海外に出て、やって行くか”
“アーティストをやめるしかないという話しも、よく聞きます”
“国としても、そういう事が続いて行くと、非常に損失だと思うのです”
文化庁が、まず乗り出したのが、英語による海外への情報発信です。
文化庁の課長補佐は、全国の美術館を束ねる団体に、協力を求めようと
やって来ました。 文化庁の構想です。
全国の美術館から、所蔵作品の情報を提供してもらい、データベースを作成。
更に、それを英語に翻訳し、世界に公開する事で、日本のアートの存在感を
高める狙いです。 国内の、どの美術館に、どのような作品があるのか?
文化庁も、把握しきれていませんでした。
このシンポジウムを企画した、文化庁の課長補佐の男性。
“まぁ、5年間くらいのスパンで、これを何とか成し遂げて、次のステップへ
行けるようにしたいと…”
全国の美術館を束ねる団体の会長は、言う。
“5年計画とおっしゃいましたが、5年後に、完成年度を迎えるわけではない
のですね? 始めたものは、継続して行かなければいけない”
“やはり更新されなければ、データベースは劣化して行きますから、一美術館
の努力だと、なかなか限界があるのです”
5年といわず、継続的に国が事業を進めてほしいという要望に対し、文化庁は
今後の検討を約束しました。
“日本の文化をプレゼンテーションする。 提示する”
“そういう事が、なかなかこれまで弱い”
“むしろ、ずっと海外のものを受容するという方に重きが置かれて来た事と
関係があるのですが、そこを何とかしようというのが、今、取り組んでいる
事です”
日本の現代アートの発展には、何が必要なのでしょうか?
先ほどのお話しにもありましたが、日本の存在感がないと思います。
もちろん、日本人でも世界的に有名な方はいますが、総体として、やはり、
層も薄いです。
それから、美術館の副館長が言っていましたが、英語でコミュニケーションを
する。 英語で発信をする。
そこがネックになっているのが1つと、もう1つは、さきほど指摘したように、
市場が小さいといこと。
そこにお金がなければ、人は、なかなか動こうとはしない。
日本にアート・シーンが、ないわけではないです。
大学でも、専門的な美術を教えているところはあります。
もちろん、若手の芸術家たち、芸術家たちを支援をして、彼らが作品制作に
打ち込めるような環境を作って行く事は大事です。
そこで後れを取っている部分もあるのですが、じゃあ、アメリカや中国と同じ
方法でやれるかというと、また少し違うところがある。
今まさに、社会のビジョン自体が、世界で大きく変わって来る中で、美術作品
自体も、先ほどのように資本主義市場の中で価値をつり上げて行く。
所有型のものから、共有しながら、また価値を育んで行くものがあってもいい
だろうと。 この先駆けというのが、すでにあります。
例えば、瀬戸内海の豊島美術館です。 (香川県)
これ、ただ1つの作品しか展示していないのですが、アートと建築と自然が
融合して、いわゆる所有不可能な作品となっています。
更に、地域の物語とも結びついているのですが、ただ、その作品を鑑賞した
時に、命と世界を感じる。
空間体験というのは、これも、また普遍的なものであり、世界中から、非常に
多くの人たちが訪れて来ています。
こういった方法というのも、やはり日本が歩んで行く1つの方向性には、なって
行くのかなという風には思います。
なぜ、私たちの社会に、現代アートが必要なのでしょうか?
なぜ、それを育てて行く事が大事なのでしょうか?
例えば、今、京都に、世界中から観光客がやって来ますよね?
それは、日本の伝統的な素晴らしさとか、我々の思想みたいなものも、彼らに
伝えるわけです。
あそこは、文化財と美術品のタイムカプセルになっているのです。
現代アートは、今、現在は最先端ですが、100年後、1000年後に、そういう
モノを作らなければ、1000年後の今の京都のようなタイムカプセルを持てない
という事になるわけです。
これは国としても、人類としても、非常に大きな損失ではないかと思います。