第2117回「あなたの一番古い記憶はなんですか?」会社革命の波は、日本を代表する巨大企業にも。
巨大企業が挑む、聖域なき改革。
日本を代表する、巨大企業でも、抜本的な改革が始まっています。
今、本社ビルのオフィスには、人は、ほとんどいません。
本社勤務や総務、管理部門などの従業員に対し、原則テレワークを導入。
出勤を80%以上、減らしているのです。
さらに、出勤するのが当たり前と考えられて来た製造現場に対しても、出勤を
15%以上削減するという方針を打ち出しています。
国内7万人の従業員の指揮をとる、巨大企業の社長。
この2カ月、どうすれば、ものづくりの現場で、改革が実行できるのか模索を
続けて来ました。
“劇的な変化が、今の社会では起こっていると考えた方がいいので、従業員
の方と一緒に、今それぞれの職場ごとに、どういう形がいいのかという事を
まさに作り込んでいるところです”
改革が進行中の府中工場です。
作っているのは、鉄道やダム・交通システムを制御する基盤など。
社会インフラを担うため、新型コロナの感染が拡大する中でも、通常通りに
稼働し続けて来ました。
この日、改革の柱となる試みについて、若手社員への聞き取りが行なわれ
ました。
“週休3日についての議論を進めたいなと思って…”
週休3日制の導入です。
通勤中や勤務中の感染リスクを、減らす事が出来ると考えています。
週に5日出勤し、1日およそ8時間働く、従来の働き方。
1日の労働時間を2時間ほど延ばす事で、1週間あたりの勤務時間を変えずに
出勤日数を1日減らそうというのです。 これに対し、従業員は…。
‘僕は、旅行に行くのが趣味なので、今後、旅行に行けるようになったら、
色んな所に行きたいなと思っていたので…’
休みが増えるというメリットを感じる従業員がいる一方で、不安の声も上がり
ました。
‘僕は7歳と1歳の子供がいるのですが基本的に保育園が7時までなのです’
‘勤務時間が増えると、確実に子供の送り迎えだったり、妻に任せっきりに
なりので…’
更に、取引先との調整なども必要です。 実現に向けた議論が続いています。
府中事業所の所長は、言う。
“大勢の方々が受け入れられる施策でないと結果的には長続きもしませんし
柔軟性を持ってこれからやって行く事が1番大切でまずは1歩目を踏み出して
途中で変化する事も恐れずに、随時、軌道修正をして行く”
グループ企業の設計部門では、1カ月間、完全テレワークを試みました。
“作図なので、基本的にパソコン1台あれば出来る作業なので、特に問題は
ないです”
しかし、全く出社しないのは難しいという声が上がりました。
入社2年目の男性です。 Q: 今、何をされているのですか?
“照明関係のカタログを、ここでしか見れないので、まず最初にやろうと思って
取りました”
設計には、法律で定められた設置基準など、膨大な知識が必要なため、
オフィスに保管されている資料を確認する必要があるのです。
“誘導灯の設置基準について何も知らなかったので、そもそもこういう基準が
あるという事も分からないと思った時に、自宅には何も無いので…”
“ベテランの先輩とかですと、知識とか書籍とかのバックグラウンドが色々と
あると思うので、それが無い私にとっては、ちょっと不安感とかフラストレーションは
確かに感じていたなと思います”
こうした意見を受け止め、設計部門では、週に2回まで出勤できるようにしま
した。 更に改革は、聖域ともいえる部分にも及んでいます。
取り組んでいるのは、作業現場で使用する、安全チェックリストの見直しです。
実は、重複する項目が多かったといいます。
“現場で朝、朝礼の場合、こういった形で密になる状況が生まれますので…”
安全第一の現場では、声を出しながらの目視確認が欠かせません。
重複箇所を洗い出し整理する事で、集まる時間を短くしながら、効率的に作業
を進める事を目指しています。 作業現場で何より求められる安全の確保。
これまでは、見直すという発想すら、した事はなかったといいます。
“何かが起こったらどうするんだというような心理も働きますので、なかなか
安全帳票(チェックリスト)に対しては、削るという作業は今まで誰も踏み込んで
来なかった”
“ただこういった、ちょっとしたところから、少しのところですけど、今後のコロナ
の対応だとか、そういったところ(働き方改革)にもつながって行くと思います”
新型コロナの対応に端を発した、新しい働き方の模索。
社長は、変われるかどうかが、企業の命運を分けると考えています。
巨大企業の社長は、言う。
“非常に大きな力が、今、働いていると思いますので、我々は、その新しい
環境に、より速く、より的確に適応できるように、ダーウィンじゃないですけど
変化に対して、いかに適応する能力があるか”
“ある人が生き残っていくという、種の保存ではないですけども、今、まさに
それが問われているのではないかと思いますね…”