第2115回「修学旅行の思い出は?」今、その姿を大きく変えようとしている、大都会・東京。
その訳は… 建設ラッシュ!
東京オリンピック・パラリンピックに向け、巨大な建築物が、次々に登場!
世界に誇る日本の技術力を探る、驚き日本の底力!今回は建築を大特集!
渋谷駅の真下で行われていたのは、100年に1度といわれる再開発工事!
なんと! 地下25メートルで、謎の巨大施設が建設中だった!
56年ぶりに大改修が行なわれた、日本武道館!
最大の難関は… 屋根の総張り替えだった!
重要な役割を担ったのが、屋根板をつなぐ不思議な構造の部材!
風や雨に負けない、驚きの発明とは?
頭上で車が走る中、ひそかに、ある工事が行なわれていた。
実は、大地震から首都高を守る秘密の装置が、据え付けられようとしていた
のだ!
建築に秘められた、ニッポンの底力を探るべく、今回、東京建築バスツアーを
敢行! 建築王国物語。 今回も、日本人の底力を発見します!
まず、やって来たのは、東京の湾岸エリアです。
ここには、たくさんのオリンピックの会場があり、新しく建築されたものも多い
エリアなのです。
(有明アリーナとコロシアム・東京アクアティクスセンター・東京辰巳国際水泳場)
2020年2月に完成した東京アクアティクスセンター。 水泳競技が行われます。
重さ7000トンの巨大な屋根を、ワイヤーでつり上げるリフトアップ工法を採用。
こちらは、2019年12月に完成した、有明アリーナ。
バレーボールと、車イスバスケットボールが開催される予定です。
端が上に反っている、不思議な形の屋根。
反射した太陽の光が、近隣の住宅に当たらないようにするためだとか。
次に、2019年10月に完成した、有明体操競技場です。
建物の下半分が茶色い色をしているのは、全部、木で出来ているのです。
木造建築で、屋根を支えているのは、世界最大級の木造の梁(はり)です。
梁といえば、木造住宅では、家を支えるため横にして使われるものですが…。
でも、木材で巨大な競技場を作るには、数々の難問を乗り越える必要があり
ました。 建築王国ニッポンの底力、団結力です。
日本全国から集めた、杉やカラマツ、およそ3万本。
有明体操競技場は、東京オリンピック・パラリンピックの競技施設の中で最も
多く木材が使われています。
中に入ると、広大な空間には、柱が見当たりません。
代わりに、この天井を支えているのが、世界最大級の木造の梁。
長さは、90メートル近くにも及びます。
これが、全部で15本も渡されているのです。
この建物を設計したチーム。 木の美しさを強調するためでした。 しかし…。
“実際に、本当に施工が、ちゃんとできるか?”
“描いていた強度が、ちゃんと出せるかというあたりは、なかなかハードルが
高い課題が、たくさんありました”
高い理想を込めた設計図。
前例がないだけに、その実現には、不安がありました。
かつてない困難なプロジェクトを請け負ったのは、創業200年を超える、大手
建設会社です。
巨大ビルを手掛けるゼネコンの中でも、社寺建築に力を入れ、国宝級の伝統
建築物の改修なども手掛けて来ました。
(島根県の出雲大社 や、東京の大嘗宮/だいじょうきゅう など)
しかし現場を指揮する所長は、設計図を見た時に、途方に暮れたといいます。
“これだけ大きいと、本当に、木だけで(強度が)もつのか?”
“地震とか台風でも、もつかなというのと、設計図にはどうやってやるかという
のは書いてありませんから、そこは、施工の方で工夫するしかないですよね”
最大の難関は、梁の強度。 今回、この梁が支える屋根の重さは、1800トン。
普通の木材だけで、それだけの重さに耐える事はできません。
更に、この梁、屋根の形に沿って、アーチ状に曲がっています。
一体、どうすれば、いいのでしょうか?
そこで今回、使われる事になった材料が、集成材と呼ばれる木材です。
よく見ると、何枚もの木が集まって出来ているのが、お分かりでしょうか?
集成材とは、薄く切り分けた木材を、接着剤で貼り合わせた人工の木材。
最大の特徴は、強度です。
こちらは、普通の木と、集成材の強度を比べた実験の様子です。
普通の木は、1600キログラムの荷重を超えたところで…折れてしまいました。
一方、集成材は、2200キログラムの荷重にまで耐えました。
その強度は、普通の木を、はるかに上回ります。
普通の木では、1つの木材の中に、強い部分と弱い部分があり、強度にバラ
つきがあります。 そのため、極端な荷重には耐えきれず折れてしまいます。
一方、集成材は、強い部分を選んで貼り合わせ、1つの木材にします。
いわば、木の、いいとこどりです。
これによって、自然界では、あり得ない強度を作り出すのです。
この集成材のおかげで、これまで強度の問題で木材を使えなかった、巨大
構造物にも、木材が使用されるようになって来ています。
(岡山県真庭市の落合総合センター/金沢駅東広場の鼓門/愛知県安城市の
黄柳川小学校 など)
“今回は、集成材しか、なかったと思いますね…”
“これを、アーチ状に曲げて作らないとダメですよね…”
“曲線のものを作るには、どうしても集成材…”
ここでも、集成材の、いいとこどり方式が、生かされました。