第2115回「修学旅行の思い出は?」続いては、海の上の巨大な建物を東京都港湾局の方に案内してもらいます。
2020年3月30日現在では、まだ工事中ですが、今回は特別にお見せします。
この巨大な建物は、サッカーグラウンドが、3つ入る大きさです。
しかし、この巨大な建物、なぜ海辺にあるのですか?
“こちらの建物は、東京国際クルーズターミナルと申しまして、新しい東京湾の
玄関口となり、ここに豪華客船などの船が来ます”
というわけで、早速、建物の中へ!
一行が向かったのは、到着した船から、乗船客が降りるエリア(3階)です。
こちらは、チェックインや入国審査などを行うフロアです。
まだ工事中ですから、インテリアなどは、これから。
続いては、船から降りる時に利用する、デッキ(3階)です。
あれ? 船、そこですよね? 船と距離がありますよね? どうしてですか?
“それは、ボーディング・ブリッジがありますので、大丈夫です”
ボーディング・ブリッジ? まさか、あれ、移動して来るのですか?
ボーディング・ブリッジとは、飛行場でもよく見かける、乗客を乗降させる為の
設備のことです。
船が到着したら、電気モーターで、デッキの前まで移動します。
そして、船とデッキの間に、連絡通路を伸ばすのです。
“実は船の大きさによって(出口の)位置も変わるのでデッキの柵は、どこでも
自由に、手動で開放できるようになっています”
さて、今までは、新たな東京の玄関口の上の部分を見て来ましたが、次は、
その下の部分を見てください。
建物の下の部分には、柱みたいなのが、いっぱい、ありますよね?
この建物は、実は、埋め立て地ではなくて、海の上に建っているのです。
つまり、柱の下は、直で海底という事ですか?
その辺りを伺って行くために、もう1人、同じ東京都港湾局の方に案内をして
もらいます。
なぜ同じ東京都港湾局の方に案内してもらうかというと、担当が違うのです。
1人目の方は、上物。 建物の方の担当の方です。
2人目の方は、下の方。 土台部分の担当の方なのです。
では、改めて伺います。 この建物の下の部分は、どうなっているのですか?
“柱を立てて、その上に、建物を建てています”
柱を立てて、その上に建てたと簡単に言いますが、大変だったのでは?
“大変な事が、いっぱい、ありました…”
“なぜなら、これだけの規模の建物を、海の上に建てるという事は、今までに
経験がない事だったのです”
日本で、経験がない事だったのですか? “はい、日本初です”
という事で、続いては、世界でも珍しい海上建築!
その土台作りに挑戦した人々の物語です。
建築王国ニッポンの底力、空間把握能力です。
客船から貨物船まで、1カ月に、およそ2000隻もの船が行き交う東京港。
その臨海副都心に…。
2020年、新たなランドマークとして誕生する、東京国際クルーズターミナル!
4階建てのターミナルビルは、神社仏閣の反り屋根のような和の意匠を持ち、
世界各国からのクルーズ客船を迎え入れる。
それにしても、なぜ今、東京港に、かくも巨大な客船ターミナルを作らねば
ならないのか?
東京都港湾局の総括監督員は、言う。
“最近は、クルーズ船の大型化が進んでいて、あそこのレインボーブリッジを
くぐれる船が少なくなってきています”
現在、東京港でクルーズ客船が寄港するは、レインボーブリッジより港の奥
にある晴海客船ターミナル。
接岸するには、レインボーブリッジの下を、くぐらねばならない。 しかし…。
海面からの高さが52メートルのレインボーブリッジに対し、例えばスペクトラム
オブ・ザ・シーズは、およそ63メートル。
大型クルーズ客船の多くが、通過できないのだ。
そこで、レインボーブリッジより東京港の入り口に近い、この辺りに、新たな
客船ターミナルを建てる事が決まったのだが…。
“東京港も、色々な施設があって…土地が結構、使われている状況がある”
“総合的に考えると… まぁ、海の上に造るのが1番いいという…”
そう、沿岸部は、既に、ふ頭や公園などで満杯。
ターミナルを建てるのに適した土地が、なかったのだ。
とはいえ、海に浮かんでいるわけではない。
このターミナルの足元は… 人工地盤!
海底に打ち込んだ杭が、ジャケットと呼ばれる、頑丈な土台を支えている。
その面積は、なんと、サッカーグラウンド3面分!
“ジャケットから下が土木の構造になっていて、その上が建築物になっている
のです”
“この規模の土木と建築一体型の構造は、世界的にも、ありまない構造と
なっています”
世界でも、まれな大工事が始まったのは、2017年4月。
建設予定場所に、1隻のクレーン船が、やって来た。
まずは、人工地盤を、水面下で支える杭を打ち込むのだ。
しかし何の目印もない海の上。杭を打ち込む位置は、どうやって決めるのか?
“ここに、工事用の基準点があります”
これは、位置や海面からの高さが、正確に測定された地点。
この基準点の上に測量器を設置し、直角に位置する岸壁の基準点の上に、
もう1台を設置。
2台で測量を行えば、杭を打ち込む正確な座標が割り出せるのだ。
打ち込む杭は、直径2メートル。 長さは、なんと、55メートルもある特注品!
というのも…。
“東京都の地盤の特徴としては約50メートルぐらいまで軟らかい地盤になって
います。 で、50メートルから下が硬い地盤になっていて…”
“非常に構造物は造りにくい地盤だと思います…”
最初の敵は… 東京港の地盤! 杭の重さは80トンもある!
それを支える十分な力、支持力を確保するには、一体、何メートル打ち込ま
なければならないのか? 綿密な試験が行われた。
これは、硬い層に杭を2メートルほど打ち込んだが、まだ支持力が足りないと
いうこと。 更に、1メートルほど打ち込んでみる。 すると…。
支持力を高めるには、杭を、より深く打ち込みたい。
しかし、この先には、軟らかい砂の層が点在しているため、うかつには打ち
込めないのだ。
前例がなく、全てが手探りの中、硬い層に杭を打ち込む深さは、3メートルと
決まった。 そして3メートル打ち込んだ杭に対し、更にる試験が行われた。
その名も… 急速載荷(さいか)試験。
硬い地盤に打ち込んだ杭に、衝撃を加える事で、人工地盤に巨大な建物が
建てられた時、全重量を支えきれるかチェックする。
かける荷重は、なんと… 140トン!
こうした試験を繰り返し、地震にも揺るがぬ、強固な人工地盤を築ける事が
確認された。 杭の打ち込みが始まった。