第2121回「去年の今頃は何をしていましたか?」今、その姿を大きく変えようとしている、大都会・東京。
その訳は… 建設ラッシュ!
東京オリンピック・パラリンピックに向け、巨大な建築物が、次々に登場!
世界に誇る日本の技術力を探る、驚き日本の底力!今回は建築を大特集!
渋谷駅の真下で行われていたのは、100年に1度といわれる再開発工事!
なんと! 地下25メートルで、謎の巨大施設が建設中だった!
56年ぶりに大改修が行なわれた、日本武道館!
最大の難関は… 屋根の総張り替えだった!
重要な役割を担ったのが、屋根板をつなぐ不思議な構造の部材!
風や雨に負けない、驚きの発明とは?
頭上で車が走る中、ひそかに、ある工事が行なわれていた。
実は、大地震から首都高を守る秘密の装置が、据え付けられようとしていた
のだ!
建築に秘められた、ニッポンの底力を探るべく、今回、東京建築バスツアーを
敢行! 建築王国物語。 今回も、日本人の底力を発見します!
では、続いての建築物は、高速道路の大工事です!
東京の大動脈、首都高速道路は、その76%が高架橋の上に造られている。
2020年、高架橋に、ある特殊な装置を取り付ける工事が始まった。
ところが、工事は始まったとは言うものの、上も下も車がバンバン走っている。
一体、どこで工事をしているのだろうか?
今回の工事の技術開発を主導した責任者に、話しを聞いてみた。
Q: 今、現場に来ていると聞いたのですが、どこで工事をしているのですか?
“はい、工事は、この道路の上になります”
Q: え? 上は、高速道路ですよ?
“高速道路の下、道路の上になります(首都高11号台場線/港区)”
Q: え? あの上の方にある、あれ、足場ですか? “はい、そうです”
Q: あれは、どこから入るのですか?
“歩道に設置されている、こちらの建物から上って行きます”
大人1人ほどが通れる狭さのハシゴをどんどん上ると、なんとビルの7階ほどの
高さで工事をしていた。 上った先の開けた空間に、鎖がたくさんあった。
Q: この、たくさんの鎖は、何ですか?
“我々が、今、立っている、この足場を吊り下げているチェーンになります”
Q: え?吊り下げているのですか? あ!本当だ!上の柱にくっついている!
何本もの鎖で、足元の床を吊り下げている。 足場は、宙に浮いているのだ!
Q: この上は何ですか? “この上は、今、高速道路の車が走っています”
Q: え? 高速道路の車が走っているのですか?
“はい。 1センチ2ミリの鋼板の上を、車が走っています”
Q: え? そんなに薄いのですか? “はい”
高速道路は、厚さ1センチ2ミリの鋼板の上に、8センチのアスファルト舗装が
されている。 高架橋となっている首都高の構造は、こんな造り。
道路は、橋脚と、橋げたで支えられている。
取材班がいる足場は、橋脚の横で、橋げたの下の場所に作られている。
そして取材班がいるのは、高速道路の下の、こんな場所。
左と右にあるのが、橋げた。 そして、奥にあるのが橋脚の上の部分。
今回の工事で取り付けたものを、見せてもらう。
“この目の前にある黒くなっている部分が支承(ししょう)という部品になります”
Q: 支承というのは、どういう役割をしているものなのですか?
“この下にあるのが、橋脚になります。 上にあるのが、橋げたになります”
“橋脚の上にのっているもので、橋げたを支えているものになります”
橋脚と橋げたの間にあるものが支承。 これを新たなものに付け替えたのだ。
Q: …となると、どうやって交換したのですか?
“橋げたを、ジャッキで3ミリだけ持ち上げて、取り出して、新しいものに交換”
Q: 橋げたを上げるという事は、高速道路を持ち上げるという事ですよね?
“はい、そうです” Q: それは、通行止めをしたのですか?
“いえ。車は通常通りで走った状態で、3ミリだけ、持ち上げさせて頂きました”
このオレンジ色の装置が、油圧ジャッキ。
耐震補強工事作業の所長は、言う。
“必要以上に上げてしまうと、上の走行車両に対する影響が出ますので、
それを最小限に抑えるために3ミリのジャッキアップで作業の方を行ってます”
この金属の支承を、取り外す。
ジャッキ4台で持ち上げている重量は、走る車も含めて、1000トン近い。
まずは、支承を固定していた溶接箇所を、バーナーで切断する。
重さが2.3トンもある、支承。
ナイロンベルトをかけ、滑らせるようにして、引きずり出す。
同じ場所に、新しい支承を取り付ける。 3ミリの隙間を滑らせる。
まさに、職人技だ!
Q: 古い支承と、この新しい支承は、何が違うのですか?
“古い支承は、金属で出来ていましたが、新しい支承はゴムで出来ています”
Q: え? この硬いのがゴムですか? なぜ、ゴムがいいのですか?
“ゴムにする事で、地震の時に、橋げたが動けるようになったのです”
実はゴムの支承は、耐震対策のために、付け替えられたものだった。
これは、地震の時の高架橋の揺れを表したものだ。
ゴムの支承に替えた事で、橋げたが動けるようになり、橋脚にかかる力が
小さくなる。 2つの支承を交換するのに、2カ月もの期間が、かかったという。
首都高の耐震化は、支承の交換だけではない。
夜、今回の工事の要となる作業が始まった。 足場の床に穴を開ける。
これが、今回の工事の最も重要な装置。
耐震性能を飛躍的に向上させる、最新の秘密兵器だ!
これは、一体、何なのか?