第2121回「去年の今頃は何をしていましたか?」赤々とした太陽が、ジリジリと肌を焼く、悠久の砂漠。
静かに佇む、巨大な姿があります。 世界遺産の三大ピラミッド。
かつて、3000年に及ぶ栄華を極めた、古代エジプト。
その黄金時代を象徴するピラミッドは、時を超えて世界中の人々の心を奪って
来ました。 中でも、見る者を圧倒する巨大な、クフ王の大ピラミッド。
はるか古に生み出された、驚異の文明の力。
いまだ多くの謎に包まれています。
観光客たちは、言う。
“あんな巨大な石を、どうやって積み上げたのか? 全く、想像できません”
“本当に大きくて、感動しました。 自分が小さく感じます”
“地球以外の生き物が、建てたんじゃないですか?”
今、最新の発掘調査で、大ピラミッドの全貌を解き明かす新発見が、相次いで
います。 その中でも、世界中を驚かせた、世紀の大発見!
それは、地中に残された、1000を超える、紙の断片。
エジプト最古のパピルス(文書)が、見つかったのです。
考古学者は言う。“大量のパピルスです。想像もしていなかった発見です!”
そこに記されていたのは、何千年もの間、神秘のベールに包まれていた、
大ピラミッド建造の記録!
大きな謎だった、建造方法や、建造期間の手掛かりが、ついに明らかに!
古代の採石場から見えて来た、世界最大の巨石建造物を生み出す、驚異の
テクノロジーとは?
今回、大ピラミッド建造の謎を解き明かすため、エジプトを訪れた日本人の
エジプト考古学者。
“この石とか、めちゃくちゃデカイですよね…”
最前線で活躍する世界中の研究者と、数々の発掘調査を行って来ました。
番組では、日本人のエジプト考古学者と共に、大ピラミッドにまつわる七つの
謎を完全解剖!
一体、なぜ?どの様にして?誰の手によって?大ピラミッドは誕生したのか?
今回、最新の研究成果をもとに、大ピラミッド建造の謎を解き明かす旅が
始まります!
続いての謎は、大ピラミッド建造に、どのくらいの時間が掛かったのか?
謎を解く鍵となったのは、やはり、あの、新発見のパピルスでした!
大ピラミッド。 その建造は、王の即位とともに始まった事が分かっています。
では、完成までに、どれほどの時間が掛かったのか?
世界中の人々の興味を、かきたてて来ました。
最も有名なのは紀元前5世紀、古代ギリシアの歴史家ヘロドトスが唱えた説。
それは、ピラミッドの建造に… 10万人の人間を使い、20年の歳月を要した
というものでした。
20世紀にはオカルト思想の人々を惹きつけた人物(エドガー・ケイシー)による
建造期間は100年だったという推測も。 天をつく大ピラミッド。
その建造期間の謎は、解けるのでしょうか?
重要な手掛かりが、あの最古のパピルスに記されていました。
その一部は、カイロ博物館に展示されています。
日本人のエジプト考古学者は、言う。
“これが、メレルの日誌ですよね”
“ここであれば、ちょうど真ん中の所に書いてあるのが、2日目にメレルが、
トゥーラという石切り場があったのですが、そのトゥーラという石切り場で、石を
引っ張って、これは切り出して、運んで、そこで1泊したという事が書いてます”
“で次の日、3日になると、その切り出した石というのを、メレルと彼らのチーム
メンバーたちが、アケト・クフ…”
“これは、ちょうど、丸い枠の所に書かれてある言葉なのですが、クフ王の
ピラミッドの古代の名前ですね”
“そこの所に、石を運んで行ったという事が、書いています”
メレルの日誌に出て来る、アケト・クフ。 クフ王のピラミッドを意味します。
この同じ文書に、トゥーラという採石場の記録がありました。
メレルは、ピラミッドの建造現場と、採石場や港など、各地を、日々、移動して
いた事が分かりました。
“本当に、メレル自身が書いたので、メレルの癖というか、そういったものが、
ここに出ているのだなと思います”
“やはり、こういった所からも、非常に生々しく、当時の人たちの感覚が伝わる
ような感じですよね…”
大ピラミッドの建造を支えていた監督、メレル。
実は、最古のパピルスには、大ピラミッドの建造期間に迫る、2つの重要な
手掛かりが隠されていました。
まず注目すべきは、メレルが、採石場のトゥーラを訪ねていた事。
トゥーラは、白くて良質な石灰岩の産地でした。
ピラミッドを覆う、化粧板に使われました。
もともとピラミッドは、滑らかな化粧板で表面全体が覆われ、太陽の下で、白く
輝く存在でした。
現在も、カフラー王のピラミッドの上部に、貴重な化粧板が残されています。
トゥーラを訪ねたメレルが、化粧板を運んでいたとすると、それは、大ピラミッド
建造が、最後の工程にあった事を意味するのです。
王の即位とともに始まる、ピラミッドの建造。
それから何年後に、化粧板を運んでいたのかが分かれば、建造期間が、
ついに解明されます! そこで重要になるのが、2つ目の手掛かりです。
それも、最古のパピルスにありました!
その記述とはクフ王のもとで13回目の家畜調査が行なわれていたというもの。
当時エジプトでは、税金を決めるため、家畜の頭数を数える調査が2年に1度
行なわれていました。
この13回目の調査と同じ時期に、トゥーラの石が運ばれていました。
つまり、クフ王が即位して、26年目か、その翌年に、大ピラミッドは化粧板で
表面を覆い、完成を迎えたと推測されるのです。
これまで、ベールに包まれて来た、大ピラミッドの建造期間。
監督メレルが残したパピルスによって、ついにその謎が明らかになりました!
10年以上にわたり、発掘調査を行う、エジプト考古学者は、言う。
“クフ王が亡くなったのも即位から26年を過ぎた夏だったと考えられています”
“ピラミッドの完成と同じ頃でした”
“これでメレルたちが、ワディ・エル=ジャラフを訪ねるのも最後となりました”
“そして、パピルスが残されたのです”
クフ王の在位の間、26年以上にわたって、大ピラミッドの建造は続いたと考え
られます。
そして王の死とともに、誰も見た事がなかった、巨大なピラミッドが、この世に
誕生したのです。
26~27年も掛かるだなんて、果てしないですよね…。
また逆に、人力だけで、あれだけのものを造るには、もっと何百年も掛かると
思っていました。
ピラミッドを造るだけでも大変なのに、傾斜路とか色々、準備から、石の切り
出しから始まって… 20何年で出来るだなんて、ちょっと意外でした。
ピラミッドは、基本的に、王様の在位の期間に造られる。
つまりクフ王が亡くなった後、次に別の王が王位に就いたら、新しいピラミッド
を建造し始める。
そこでやはりピラミッドというのは、生きている間に完成しなければならない。
それが古代エジプトの伝統的な、王の墓の造り方です。
でも、あまりに大きいものだから、造ろうって言い過ぎてしまったら、自分が
生きている間に完成しない可能性の方が高いわけですよね?
それは、十分にあり得ますね…。