第2121回「去年の今頃は何をしていましたか?」では、続いての謎は、ピラミッドがもたらした、社会の大変動とは?
これは、やはり、近年、考古学者によって言われ始めている事なのですが、
ピラミッドを造った結果、これが社会にもたらしたインパクトが、非常に大きな
インパクトがあったという事が言われて始めて来ています。
大ピラミッドは、単なる一大建造プロジェクトに、とどまりませんでした。
古代エジプトを根底から覆す、ある大変動をもたらしていたのです。
それは、一体、どのようなものだったのでしょうか?
ヒントは、1人の人物の墓に眠っていました。
エジプト考古学者は、言う。
“ここは墓の中で、最も大きく、美しい部屋です”
“4300年前のものにも関わらず、色鮮やかに残っています”
今も、色あせる事なく、美しい壁画が残る、巨大な墓。
部屋の数は、なんと、32室もあります。
この墓の主は、メレルカという人物でした。 一体、何者なのか?
墓にたつ像の横には、メレルカが生前、持っていた数々の称号が刻まれて
います。 そこには、王の都の監督官・司祭、そして王の最も親しい友。
実は、メレルカは、王のもとで政治を執り行う宰相でした。
その称号の数は、84にも及びました。
途方もない数の役割を担っていた、メレルカ。
彼が築いた、この巨大な墓には、1カ所、不可思議な場所があります。
よく見てみると、削り取れらたような跡。
さあ、ここでクイズです!
Q: 削り取られた場所には、一体、何が描かれていたのでしょうか?
正解は…。
“メレルカに仕えていた召使いは、捧げ物を持って立っていましたが、この
壁から、完全に除去されてしまいました”
“これは、大きな過ちを犯した事を受けた、懲罰なのでしょう”
そう、壁から削り取られたのは、メレルカの部下。
壁画から消し去る事で、罪を犯した部下が来世へと行けないよう、厳罰を
科していたのです。
この時、メレルカたち官僚は、王に代わり、強大な権力を振るうようになって
いました。
それを可能にしたのが、ピラミッド建造を通じて生まれた、成熟した社会。
現代につながる、国という形でした。
“労働者の食料を調達するために、新たな農場や牧場の運営が始まりました”
“レバノンから木材を調達する為に、国際的なネットワークも構築されました”
ピラミッド建造という、一大プロジェクトによって形づくられていった、物流ネット
ワーク。
それとともに、物資の積み降ろしを行う巨大な港やダム建造など、インフラの
整備も、急速に進められて行きました。
エジプト全土を行き交う莫大なエネルギーは、いつしか官僚たちが握る1点へ
集中して行ったのです。
日本人のエジプト考古学者は、言う。
“ピラミッド建造は、初めて、国の力や人の力、物資等が流れ込んで来た時の
パワーを、注ぎ込んだのだなという気がします”
“人の組織づくりも、どういったものが必要かを考えて、社会の構造自体まで
生み出して行く、本当にイノベーティブな時代だったと思います”
発掘現場で調査を指揮するエジプト考古学者は、言う。
“巨大なピラミッドよりも、その建設のために構築されたネットワークやインフラが
より重要になって行ったのです”
メレルカの墓の壁画には、こんなものも残されています。
それは、妻の演奏する音楽を楽しむ、メレルカの姿。
実は、この妻は、王の娘でした。
当時の王は、権力を握ったメレルカのもとに、娘を嫁がせていたのです。
メレルカは、古代エジプトを牛耳る、絶大な力を手にしていました。
日本人のエジプト考古学者は、言う。
“それまでは、現人神である王が中心に、行政や神官などが回って来たのが
それぞれの力が強くなって、王の権力が衰えて行った”
“それ以降はこういった巨大な建造物を建てるのはできなくなったのでしょう”
これは、同じ頃に造られた、王のピラミッド。
王の存在感を表すように、小さなものになっていました。
世界の仕組みが変わり、国中が、混乱へと向かって行く時代。
ピラミッド建造がもたらした大変動によって、古代エジプト文明は新たな局面を
迎える事になったのです。
まぁ、社会が成熟したという形ですよね。
純粋な王権政治から、官僚政治に変わって行った。
もう、現代と古代含めて、同じような事が起こっていますよね。
いかに、国から、色んなところから税を集めて、中央に持って来て、それを
再分配するのか?
それを行うのが官僚たちなので、それが、やはり、力を蓄えて行くという。
それによって、王の力が、今度は衰えて行く。
では、ここで、もう1人、スペシャルゲストを、お呼びします!
続いての特別ゲストは、宰相メレルカです!
監督メレルと似ていますが… 時代は違う人です。
メレルは、いわゆる、中級の役人でしたが、メレルカは、まさに大臣だった。
なので、相当、権力は持っていました。
このメレルカ、何といっても、肩書がいっぱいありました。
実際に、監督官というのが多いのです。
例えば、ピラミッドのピラミッド・タウンという、あの町の監督官など。
あとは、宰相… いわゆる、大臣ですね。
あと、1番大事なのが、王の全ての労働の監督官というものです。
これはどういう事かというと、ピラミッドを造った監督官という事で彼もピラミッド
を造っていた。
つまり、権力の象徴に携わっていたので、1番偉いという事ですね。
その他には、2つの宝物庫の監督官で、今で言うと財務大臣みたいなもの。
2つの穀物庫の監督官で、農林大臣みたいなものもあります。
王と、ほぼ同等の権力をもっていた、それがメレルカです。