FC2 トラックバックテーマ:「肌身離さず持っているもの」2014年、ミンダナオ島で、山下財宝をかたり、偽の金塊を売りつけようとした
詐欺グループが逮捕された。
一攫千金の夢を秘めた山下財宝には、今でも怪しい投資話しや、詐欺事件が
頻発している。
例えば、数多く出回っている宝の地図も、自作のニセモノを、元日本兵に
もらったと称して売りつける手口など。
こちらの男性も山下財宝の発掘に投資するよう持ちかけられ、妻との大事な
貯金を、持ち逃げされたという。
“この写真です。 これが最初に見せられた金塊です”
“彼らが言って来たのは、この洞窟の中に、金塊があるはずだ!”
“その財宝は、山下財宝だと言われました”
“私はお金を儲けたいと強く思って、家族に豪華な生活を味わせたくてお金を
出しました。 生活が良くなるはずだったのに、騙されました…”
山下財宝。貧富の格差が激しいフィリピン社会においては、真剣な儲け話しと
密接した不思議な都市伝説なのだ!
山下財宝の発掘にも詳しい教授は、言う。
“フィリピンでは、多くの人が貧困の中にあります”
“経済的に豊かな人たちも、もっと儲けたいと思っています”
“リッチになる近道を、探しているからです”
“フィリピン人は、特に、近道をしたがります。それが文化になっているのです”
“早く目的を達成したい時に、財宝があると聞いたら、じゃあ、探そう!”
“地道に仕事するより、すぐお金持ちになりたい!だから、財宝を探すのです”
実は、山下財宝伝説が、信憑性あるものとして語られる背景には、日本と
フィリピンの歴史が、大きな影を落としている。
フィリピンは16世紀以降、スペインやアメリカの植民地として支配され、民衆の
多くは、大規模農園や工場で、過酷な労働を強いられた。
貧富の格差は、ここに始まっている。
しかし、1941年12月8日、太平洋戦争、開戦。
日本軍は、開戦から数日後に、フィリピン・ルソン島に上陸を開始する。
アメリカ・フィリピン連合軍15万に対し、日本軍、僅か4万3000。
しかし、兵力の差に苦戦を強いられながらも、日本軍は、翌年6月までに、
フィリピンのほぼ全域を制圧。
日本は、僅か半年で、370年続いた欧米による支配を終わらせたのだ。
第2次世界大戦の戦争博物館を経営する歴史学者は、言う。
“日本は、アジアに強い国がある事を証明してくれました”
“アジア人に、日本は経済でも戦争でも、強い事を見せつけてくれたのです”
“しかしフィリピン人は、日本の強さを、過小評価しすぎました”
“良い面しか見ていなかった事を、後に思い知ったのです”
フィリピンを占領した日本軍は、強圧的な軍政によって、軍事物資などの現地
徴収を強化したため、庶民の暮らしは、ますます厳しくなった。
地元の88歳の男性は、言う。
“物を奪われ、食べ物を奪われ、空腹で亡くなった方も大勢います”
“本当に、悲惨でした”
“村の人は、なけなしのお金や貴金属を、食べ物と交換していました”
“でも、日本兵に、全部、取り上げられました”
“たくさんの人が、飢えで亡くなったのです”
更に、1944年10月からのフィリピンの奪還を目指すアメリカ軍との戦いは、
マニラなどでの激戦で、111万人ものフィリピン人の犠牲を出したという。
フィリピンで、山下財宝を取材したノンフィクション作家は、日本の戦争の
影響を、こう語る。
“フィリピンの国民に、大変な迷惑を与えたのではないですか?”
“アジアの解放と独立と言いながら、実は、その建前と、実に、反対の事を
やって来た事が、第2次大戦の実情じゃないかなと思うのです”
“ですから、結局は、日本が強大だったのです。 その時はね”
“強大で、とても大きな力を持っていたために、こういう強大な力だったら、
山下財宝ぐらいの事はあっという間に、どっからでも持って来て、どっからでも
こういう考え方を、するようになるだろうと…”
第2次世界大戦の戦争博物館を経営する歴史学者は、言う。
“フィリピンの豊かな生活や、経済・産業・農業等が大きな打撃を受けました”
“また日本軍は、フィリピン人を、大勢、殺しました”
“フィリピンが日本に支配されて、およそ3年、全てにおいて、かなり絶望的な
時期だったと思います”
長年にわたり、植民地支配をして来た欧米人を、同じアジア人でありながら、
軍事力で排除した日本人への期待…。
しかし、その後、期待を裏切り、強圧的な支配によって、苦しみと悲劇を生み
出した日本人への失望と怒り…。