自分ではじめる老後でも儲かる在宅仕事の成功術！

第2121回「去年の今頃は何をしていましたか？」
新型コロナ騒ぎで、ここが変だよ日本人！

根拠のないデマに振り回され、買い占めで物不足の悪循環！

感染者に誹謗中傷。　まるで加害者扱い。

目に見えない恐怖で、人類は、ろくな事をしない！

文明誕生以来、人類を苦しめ続けてきた感染症。

古くは、黒死病ペスト・コレラ、20世紀は、インフルエンザ。

原因不明、訳も分からず死が襲う地獄絵図。

解決できない恐怖に対し、人は、一体、何にすがって来たのか？

病の原因は、何だ？　　　星の巡り？　　悪い狐？　　腐った空気？

病の不安で、なぜ、差別や虐殺が起きるのか？

今では常識？　感染症対策をめぐり、大騒動！

手洗いをすすめる学者の名案に、なぜ、医学界の権威は激怒したのか？

マスク着用は、なぜ、街の対立を招いたのか？

人類が繰り返す、勘違いと悲劇。

人は、なぜ、見えない恐怖に翻弄されるのか？

現代の私たちは、感染症とは、目に見えない細菌やウイルスなどが原因だと
知っています。　でも、そもそも細菌とウイルスの違いって、ご存知ですか？

細菌は、大きさが1000分の1ミリから100分の1ミリ。

光学顕微鏡で見る事ができるサイズ。

小さな単細胞生物なので、水と栄養・適切な環境があれば、自分だけで分裂
して、数を増やす事ができます。

一方のウイルスは、細菌の更に、10分の1から100分の1。

電子顕微鏡を使わないと、見る事ができません。

タンパク質の殻の中に、遺伝情報を伝える物質が入っているだけなので、
分裂・増殖も不可能。

そのかわりに、他の生物の細胞に寄生して機能を利用し、自分のコピーを
増やして行くのです。

大きめサイズで複雑なつくりなので、自分で増殖して、たくましく生きて行ける
細菌と、小さくてシンプルで弱々しい。

でも、だからこそ、他の生物の細胞に、次々と寄生して行くウイルス。

このポイントは、後で、また出て来ますから、覚えておいて下さいね！

現代、飛沫(ひまつ)感染を防ぐのに有効といわれるマスク。

昔は、こんなマスクが大事にされた。　　　西暦2020年　→　西暦1650年。

何だ？　この不気味なマスクは！　鳥か？　死に神か？

これは、17世紀に、ヨーロッパの医師が着けていたといわれるマスク。

実は、鳥のくちばしのような部分には、薬草が入っている。

病気で汚染された空気を、浄化するためだ。

目の部分にはガラス。　これも、悪い空気除けだ。

かつてヨーロッパでは、感染症は、悪い空気が引き起こすと考えられていた。

その最悪のケースが、14世紀から18世紀にかけ、度々、ヨーロッパを襲った
ペストだ！

突然の発熱から、嘔吐・下痢・リンパ節が大きく腫れ、体が黒く変色し、僅か
5日ほどで死に至る事から、黒死病とも呼ばれた。

特に1346年から、およそ6年間の大流行は、中央アジアから広がりイタリアに
上陸。　一説には、ヨーロッパ人口のおよそ60％、5000万近くの死者を出した
といわれる。　死が街を覆い尽くす地獄絵図。

墓での埋葬が追いつかず、死体の山が高くなるばかりで、目に見えないﾍﾟｽﾄ
の原因は不明のまま。

一部の裕福な人々は街から逃げ出し、郊外の屋敷に閉じ籠もった。

いわば、ステイホームで、ペストを、やり過ごそうとした。

そんな1人、14世紀イタリアの作家ジョバンニ・ボッカチオはペスト流行の原因
を、こう記している。

デカメロン　より。
この疫病が、ひどい有様になったのは、人の接触によって病人から健康な
人へと感染して行ったからです。
病人を、時々、訪ねるだけでも、感染して死んでしまい、衣服をはじめ、病人が
触ったり使ったりしたものは何でも、ひとたび触ると、たちまち感染してしまう
のです。

現代では、ペストの原因は、ペスト菌という細菌だと判明している。

動物から人間に感染し、広がる仕組みのうち、当時の人々は、人間同士で
何かが、うつる事までは、把握していたのだ。

医学歴史倫理研究所の所長は、言う。

“でも、当時の人々は、微生物というような、極小の存在を知りません”

“そのかわりに、一種の毒のような物質が作用しているのではないかと考え
ました。　その正体が、何であるのかは、全く分かりませんでしたが…”

その結果、ペストの毒の原因は、神の罰と、人々は考えた。

目に見えない現象は、神の　みわざ、と考えるのが自然だったのだ。

ところが、当時の学者たちは、もっと科学的に原因を追及しようとしていた。

1348年、ヨーロッパ最高峰の医学機関フランス・バリ大学医学部は、ペストの
毒が、なぜ、発生するのか？　研究成果を発表した。

疫病の概要　より。
ペストは火星や木星など、惑星の不吉な配置、地震などの異常気象、更には
動物の大量の死骸により、腐敗した空気、すなわち、瘴気(しょうき)によって
起きるのだ。

実は、この、病気の原因を宇宙から考えるという発想は、紀元前5世紀ごろ、
古代ギリシャの世界観に、もとがある。

世界を構成しているのは、天体や空気、大地・水、これらが精密な秩序の
もとに動いている時は、世界は安定している。

ところが、その中の一部でバランスが崩れると、たちまち世界には悪い環境が
生み出され、汚染物質が発生。

そうした毒を含んだ空気は瘴気(しょうき)と呼ばれ、ペストをはじめ、さまざまな
病気の原因となるのだ。

肉眼では見えない病気の原因を、秩序とﾊﾞﾗﾝｽという、これまた目に見えない
ものに求める発想。　それが、当時の世界観に基づく、科学だったのだ。

しかし、ペストの不安におびえる庶民には、納得できなかった。

原因が宇宙の秩序といわれても、ピンと来ない。

また、神の罰だとすると、自分たちが悪い事になってしまう。

そんなはずはない！

カトリックが使う井戸や泉に毒物を入れ、ﾍﾟｽﾄの原因となる瘴気を発生させた
ヤツがいる！　　ユダヤ人だ！

ヨーロッパ・カトリック世界では、国を持たない異教徒ユダヤ人は、秩序を乱す
者として、長年、迫害されて来た。

ユダヤ人が怪しいという疑いこそ、見えない恐怖におびえる庶民が求めた
答えだったのだ。

医学歴史倫理研究所の所長は、言う。

“ユダヤ人が、井戸に毒を入れているという事は、当時の人々にとっては、
一種の連想チェーンでした”

“ペストからさかのぼって連想すると、毒を水に入れる行為まで、容易にたどり
ついたのです”

“ペストの原因は、毒の空気、瘴気(しょうき)によって広まっている”

“その瘴気を生み出しているのは？　毒の水だ”

“毒を入れたのは？　それはユダヤ人の陰謀だ！”

“だから、大量のペスト患者が発生する”

“これが、当時の人々にとって、納得のいく答えだったのです”

最悪のペスト大流行の時代、1348年3月。

スペイン・ﾊﾞﾙｾﾛﾅで感染が広まるや、ユダヤ人が疑われ、虐殺が始まった。

4月にはフランス南部、9月にはスイスと感染が広がるにつれて、迫害も拡大。

特に最悪の悲劇が起きたのが、フランス北東部、ドイツとの国境沿いの街、
ストラスブール。

1349年2月。 まだペスト感染が始まってもいないのに、被害を未然に防ごうと
ユダヤ人狩りを始めたのだ。

およそ900人のユダヤ人が、共同墓地に掘った大穴で殺された。

その後も、虐殺の嵐は吹き荒れ、ヨーロッパで100以上のユダヤ社会が壊滅
1万人以上が犠牲になったという。

見えない恐怖の原因を知りたいという人間の心理は、時に差別という、目に
見えない心の闇をも引きずり出してしまうのだ。