FC2トラックバックテーマ 「金縛りにあったことある?」当時、トランブルは、20代の若者。
長編映画は初めてだった事もあり、大変な思いをしたという。
“キューブリック監督は、極度に質の高いものを、常に要求して来たんだ”
“全て完璧でなくてはならず、一切のミスは許されなかった”
“だから我々スタッフの間では、キューブリックは人をひどく怒らせ、落胆させる
男だと、悪評が立っていたね”
完璧さを求めてくる監督に、現場は四苦八苦。
そんな苦しみを、どうやって成功に変えて行ったのか?
スタッフを苦しめたのは、キューブリックが求める、未来の世界。
当然、誰も見た事が無く、イメージもなかった。
しかも、監督からの具体的な指示はなく、質問しても…。
‘出来るかどうか、分からないものが欲しいんだ’
と、衝撃的な言葉が返ってくる。
キューブリックは、今までにない映像こそが、未来的だと考えていたようだが、
やる方は、たまったものではない。 撮影は、遅れに遅れた。
“キューブリックは、イライラしていたね”
“彼は、頭をフル回転させ、効率的に撮影できる方法を考えていたよ”
“面白い話しがある”
“キューブリックは、私には簡潔な言葉で話せ… と、言い出したんだ”
“ペンキが欲しい。 みたいに、3つの単語だけで話せと”
“それだけしか聞きたくない!”
“先週はどうたったとか、売店でどうしたとか、聞きたくない!”
“時間がないから、早く本題を言え! とね…”
“数日しか続かなかったが、気が狂いそうになったよ…”
監督も迷走。 スタッフとの関係は、日に日にギクシャクして行った。
しかし、トランブルは違った。
“よく、キューブリックは、普通とは真逆の事をしたいんだ、と言っていた”
“でも、初めてで、何が普通か分からなかったんだ”
“それがキューブリック流で、私は監督が求めている事をしようと思ったね”
監督の要求は厳しかったが、スタッフたちは、未来をデザインしようと、必死に
奮闘した。
NASAでロケットをデザインしていた専門家を雇い、科学的にもデザイン的にも
革新的な宇宙船が生み出されて行った。
ところが、キューブリックから、新たな無理難題を突きつけられる。
今度は時空を超える旅スターゲートという地球外生命の高度なテクノロジーを
映像化しろというのだ。 とにかく、革新的な映像が欲しいという。
それを解決したのが、トランブルだった。
この斬新な映像。 CGもない時代に、なぜ、経験の浅い若者が生み出す事が
できたのか?
監督の要求に、皆、お手上げ状態の中、トランブルは、柔軟なアイデアで
突破口を開いた。
それは、写真カメラで、移動する光を、長時間露出で撮影すると、光の残像が
写る。 それを動かせば、今までにない映像が出来るのではないか?
持ち前の行動力を発揮し、監督に相談する。
“試作の写真を、キューブリックに見せに行ったんだ”
“これがスターゲートに、なるかも知れないと”
“するとキューブリックから、よし、分かった。 できそうだ。 必要なものは?と
言われたんだ”
“そのためには、この部屋よりも大きな機械をつくらなくてはいけませんと、
私が言うと、それなら、すぐに取りかかれ!と、言われたよ”
大抜擢された。 しかし、ここからが大変だった。
まず自力で、大がかりな撮影機材を、開発しなければならなかった。
完成しても、思ったようにいかず、何千回も試行錯誤を繰り返す日々。
結局、1シーンのために4カ月もかけ、ようやく完成する。
チャレンジ精神が生んだ、画期的映像。
“研究開発のようなプロジェクトだった”
“キューブリックのビジョンと、クラークのストーリーを映像化するため、全てを
発明しなければならなかったんだ”
“あくなき探求心が、映画を唯一無二のものにしたと思う”
トランブルだけではない。 映画の成功に欠かせない人物がいる。
美術監督のトニー・マスターズだ。
マスターズは、当時の映像技術では、実現不可能と思われた宇宙空間を、
スタイリッシュに、つくりあげた。 このシーンを見てほしい。
人工重力で、どこでも歩ける宇宙船の内部。
ボーマンが、ハシゴを下りてきたと思ったら、今度は、天井へと歩き始めた。
その先には、逆さまで食事をするクルーがいる。 何とも奇妙な映像だ。
一体、どうやって撮影したのか?
マスターズは、大がかりな仕掛けを用意していた。
実は、このセット、巨大な筒形になっている。
更に驚くべき事に、観覧車のように回転するのだ。
ボーマン船長役のキア・デュリアは、言う。
“あのシーンでは、もう1人の宇宙飛行士が上にいて、逆さまになって食べて
います。 もちろん彼は、安全ベルトに、つながれています”
“私は歩いて上にいる彼の方に行き隣に座りますが、言うまでもなく、重力に
逆らっているわけではありません。 セットが回転し、彼がやって来たのです”
“私は、その場で、ただ歩いただけです”
“ウォルト・ディズニーでも、思いつかないトリックですよ!”