FC2 トラックバックテーマ:「今年一番心に残ったいい出来事は?」皆さんは、夜空を見上げながら、こんな想像をした事はありませんか?
あの星空の果ては、どうなっているのだろう?
宇宙は、一体、どんな形をしているのだろう?
太古の昔から、人々の好奇心をかきたててきた、宇宙の形。
実は、この宇宙の形の解明につながるある数学の難問が、つい最近、解き
明かされたというのです。 難問の名は、ポアンカレ予想。
その証明は、2006年、科学界最大の成果と、たたえられました。
数学者のジム・カールソン博士は、言う。
“まさか私が生きているうちに、誰かが、あのポアンカレ予想を証明してしまう
なんて、思ってもみませんでした”
数学者のブルース・クライナー博士は、言う。
“ポアンカレ予想は、この100年間、多くの数学者を苦しめて来た難問中の
難問です。 ですから、最初は証明された事を、誰も信じなかったのです”
宇宙の形の謎に迫る、ポアンカレ予想。
2006年8月それを初めて証明した数学者に、数学界のノーベル賞と呼ばれる
フィールズ賞が授与される事になりました。
いよいよ、その受賞者の名前が、読み上げられます。
‘フィールズ賞は、ロシアのグリゴリ・ペレリマン博士(40)に授与されます’
さあ、壇上に、その数学者が現れると思いきや…。
‘残念ながらペレリマン博士は、受賞を拒否しました’
なんと、その難問を証明したペレリマン博士は、晴れの舞台に姿を現さず、
賞金やメダルの受け取りも、なぜか拒否してしまったのです。
数学者のウルフガング・ハーケン博士は、言う。
“フィールズ賞は、4年に1度しか授与されません”
“その栄誉を、わざわざ辞退する数学者がいるなんて、驚きでした”
“一体、どんな人物なのか? 拒否した理由は何なのか?”
“非常に興味を引かれました”
国際数学連合は、何度も、ペレリマン博士の説得を試みました。
しかし博士は、親しい友人とも連絡を断ち、ついには数学の世界から、完全に
姿を消してしまったのです。
国際数学連合は、言う。
‘これが、ペレリマン博士のために用意したフィールズメダルです’
‘博士のために、いつまでも保管しておくつもりです’
アルキメデスの肖像が彫られた、フィールズメダル。
70年の歴史の中で、初めて行き先を失いました。
ペレリマン博士の消息を伝えるのは、ふるさとの森で、趣味のキノコ狩りを
しているらしいというウワサだけです。
なぜ、ペレリマン博士は、姿を消してしまったのか?
宇宙の形に迫るポアンカレ予想とは、一体、どんな難問なのか?
実は、そこには世紀の難問が持つ、危険な魔力が潜んでいるというのです。
これは、1つの難問に取りつかれた数学者たちの100年にわたる闘いの物語
です。
ロシア第2の都市、サンクトペテルブルク。
行方をくらませたペレリマン博士は、この町で暮らしているといいます。
博士の消息を追って、街を訪ね歩きました。 すると…。
ペレリマン博士が住んでいるという、アパートが見つかりました。
扉には表札はなく、ノックをしても、何の反応もありません。
アパートの住人に、聞いてみた。
Q: ペレリマンさんは、こちらにお住まいですか? ‘はい、ここですよ’
‘彼は、めったに姿を見せません。この5年で、6回ほどしか彼を見ていません’
Q: 最後に見かけたのは、いつですか?
‘最後に彼を見たのは、2、3カ月前でしたね…’
ペレリマン博士が勤めていた、研究所です。
ここステクロフ数学研究所は、ロシアで最も伝統ある研究機関の1つです。
国中から、トップクラスの頭脳が終結しています。
同僚が、ペレリマン博士の部屋を、案内してくれました。
“ここは、数理物理学の研究室です”
“ペレリマンを含め、何人かの数学者が、共同で使っていました”
“ペレリマンは、いつも、この席に座って研究をしていました”
姿を消す直前に撮影された、博士の写真です。
同僚たちが、互いに議論を闘わせるのには目もくれず、ただひたすら、自分の
研究に没頭していたといいます。
“ペレリマンにとっては数学が全てです。数学は彼の人生そのものなのです”
“彼が数学の世界から身を引いたというウワサがありますが、とても信じられ
ません”
博士が消息を絶った事で、研究所の事務員は、困り果てていました。
‘ペレリマン宛ての手紙です。 アメリカのバークレー研究所からです’
‘カリフォルニア… これはイタリアのミラノから…’
‘ペレリマンに届けて欲しいという、依頼の手紙です’
世界中から届けられる、講演の依頼や招待状。
しかし、ペレリマン博士に届ける事はできません。
姿を消した博士の事を、最も心配している人物がいました。
高校時代の恩師、アレクサンドル・アブラモフさんです。
ロシアでは、ペレリマン博士の様子を隠しカメラで捉えた映像が、繰り返し
流されていました。
‘30ルーブルでさえ、今のペレリマンには大金です!’
‘賞金100万ドルを拒否しなければ、豪華な生活が出来たでしょうに!’
高校時代の恩師は、言う。 “全くひどい報道です”
“彼に対しては、もっと敬意をもって接するべきだと思います”
“それなのに、こんな扱いをするなんて…”
アブラモフさんの知るペレリマン博士は、よく笑う、明るい青年でした。
最も優秀だった教え子の身に、一体、何が起きたのか?
博士が姿を消した理由は、アブラモフさんにも、全く分かりません。
“天才というのは、普通の人とは、かけ離れた一面があるものです”
“しかし、今の状態は、何かがおかしい”
“なぜ、彼は、行方をくらましてしまったのでしょうか?”
“キッカケは、一体、何だったのでしょうか?”
ペレリマン博士が、キノコ狩りに訪れるという、サンクトペテルブルク郊外の
森です。 博士らしき人影は、見つかりません。
博士は、なぜ、姿を消してしまったのか?
実は、数学者たちの間に伝わる、不思議な話しを耳にしました。
ペレリマン博士が証明したポアンカレ予想という難問には、この100年間、
数々の数学者の人生を翻弄し、狂わせて来た過去があるというのです。
博士が姿を消した理由を知るためには、ポアンカレ予想とは、一体、どんな
難問なのか? その長い歴史をたどる必要があるのです。