FC2 トラックバックテーマ:「目の前に白ご飯があります。お供を1つだけ選ぶとしたら?」高い品質を武器に、世界の消費者を魅了してきた、日本の農産物。
タイ・バンコクにある高級百貨店で、お客は言う。
“日本果物は、高品質でプレミアです”
ところが、今、世界で起きている、新たな潮流への対応を迫られています。
その1つが、農薬の規制強化です。
農薬の基準を、独自に引き上げる国が相次ぎ、日本の基準を満たしていても
輸出ができなくなる懸念が広がっているのです。
日本の農家は、言う。
“ある日、突然、貿易障壁みたいな形で、ビックリしましたね…”
もう1つの潮流。 それは、有機農産物を巡る、し烈な競争。
実は、今、EUに最も多く輸出しているのは、中国。
日本は、その、およそ150分の1です。
(1位中国415t、2位エクアドル278t、3位ドミニカ275t … 52位日本2.8t)
その差を埋めようと、産地を挙げた取り組みが始まっています。
製茶農家は、言う。
“厳しい事にチャレンジして行かないと、次の一手には進めない”
世界の新たな潮流の中で、何が求められるのか?
JAPANブランドの新戦略を探ります。
ここは、アジアを中心に、高級フルーツや野菜を輸出する会社です。
現地の百貨店に売り場を構え、富裕層を中心に、顧客を増やして来ました。
ところが6月、重要な市場の1つ、タイが、一部の農薬を使用禁止にすると
発表しました。
輸出会社の社長は、言う。
“規制で、1番、引っ掛かって来るのは、イチゴかなと思っていて…”
来年から、対象の農薬が検出されない事が、輸出の条件となったのです。
“万が一、検査に引っ掛かってしまった場合、罰則というのも出て来る?”
タイの現地社員は、言う。 ‘検査で引っ掛かってしまうと、通関できません’
‘今まで築き上げて来たところが、損なわれてしまう…’
禁止された農薬は、日本で一般的に使われているため、影響は大きいと見て
います。
“本当に日本は、いい商品、いい果物がいっぱいあるので、残念ですよね…”
“減ってしまうというのは、かなり懸念しています”
産地にも、戸惑いが広がっています。
青森県のリンゴ農家です。 20年ほど前に、いち早く海外輸出に乗り出し、
国内の2倍ほどの価格で販売して来ました。
中でもタイは去年、輸出を始めたばかりで、これから拡大したいと考えていた
国でした。
“ちょっとでも、検査で農薬が出れば、ダメだって事で、ビックリしましたね…”
“日本国内では、我らが昔から慣れ親しんで、当たり前のように使って来た”
産地では品質や収量を安定させるため、県などが定めた基準に従って農薬を
使用します。
含まれる成分は、36。 いずれも、日本の安全基準をクリアしたものです。
しかし、その内の1つの殺虫剤が、タイで禁止される事になったのです。
もともと、出来る限り農薬を減らして来た、リンゴ農家。
禁止される農薬を、別の種類に変える事を検討していますが、コストや手間が
かかるといいます。
“日本は、欧米に比べて降水量が倍”
“日照量が半分だから、病害虫が出やすい条件ですね…”
“病害虫の防除という観点と、残留農薬の規制という観点は、全く正反対の
もので、一方を立てれば、一方が立たなくなるようなものなのです”
“そのバランスを、どうとって栽培して行くかが、生産者としては難しいところ”
今回(2019年時点)、タイが使用禁止を発表した殺虫剤。
去年まで禁止していたのは5カ国でしたが、今年、33カ国に急増しました。
更にタイは、今回、日本でも広く使用されている除草剤の一種も禁止を発表。
禁止国は、49カ国に及んでいます。 (2020年時点)
こうした動きの先頭を走って来たのが、EUです。
2000年代から健康への懸念や環境への影響を訴える市民の声が高まる中、
基準を引き上げて来ました。
多くの国は、これまでコーデックスという国際基準に基づいて、農産物ごとに
使用してもいい農薬の種類や量を定めて来ました。
EUは、この枠組み以上に、厳しい基準を、独自に設定。
その流れに、途上国なども追従し、結果として、日本より厳しい基準になる
ケースが増えているのです。 タイの基準も、EUに準じたものでした。
国民に安全性の高い食品を届けるとともに、自国の農産物を輸出する機会を
守る狙いもあるといいます。
タイの農業省の副大臣は、言う。
“消費者は、規制が厳しい国のものと、そうでないものと、どちらを選ぶで
しょうか?”
“世界の消費者に、タイの野菜は安全だと思ってもらえてこそ、世界の台所と
言えるのです”
新たな潮流の中で、日本と世界との間で、大きなギャップが生まれています。
今年、農林水産省が、17の主要輸出先の、農薬の基準の状況を調査した
報告書です。 縦は、農薬の種類。 横は、それぞれの国や地域。
赤くなっているところは、日本よりも基準が厳しい事を示しています。
これは、コメ。 これは、みかん。
調査した13品目全てで赤いところが大部分を占め、一部の国や地域を除いて
輸出に支障が出るおそれがある事が分かったのです。
こうした現状を、どう考えるのか? 農林水産省に聞きました。
“我が国と、諸外国の基準値のどちらが高いと、一概に言う事は出来ないと
承知しています”
“輸出拡大のためには、輸出先国の規制の緩和・撤廃に向けた働きかけ”
“日本国内における輸出環境の整備など、様々な輸出先国の規制への対応
が必要と認識しています”
こうした中、日本でも広く使われている農薬を巡る、裁判の行方に、世界中の
注目が集まっています。
アメリカの企業・モンサントが開発した除草剤、ラウンドアップ。
雑草を枯らす効果が高いとされ、日本でも国の基準を満たし、最も多く使われ
ている農薬の1つです。
しかし、ここ数年、この除草剤を散布していた事が原因で、ガンになったと
企業を訴える人が相次ぎ、10万人以上に達しています。
この男性も、雑草を処理する仕事のために、高濃度の除草剤を、10年以上、
繰り返し使用して来ました。
去年、末期の特殊な白血病だと分かり、除草剤が原因ではないかと考え、
訴えました。
“彼らは、製品の危険性を、きちんと説明すべきでした”
“だまされた気がします。 いつになった治るか分かりません…”
判決次第で、世界中に影響を与えかねない、一連の裁判。
原告側は、2000万ページに及ぶ企業の内部文書を使い、企業が事前に、
発がん性を知っていたと主張しています。
その1つ、2003年に、企業内部の毒性学者が、対外的な対応をする社員に
送ったメールです。
‘ラウンドアップは、発がん性がないと、言ってはいけない’
‘なぜなら、製品が含む個別の成分について必要なテストはしていないから’