最初の取材の方で、時給換算が96円というのは、非常に驚きなのですが、
どうして、こんな事になってしまっているのか?
ジャーナリストは、言う。
“そもそも背景として、会社で終身雇用という在り方が崩れている”
“その一方で、ネットでマッチングがしやすくなっている”
“間口が非常に広がっているという事が背景としてあります”
“その中で供給側が非常に多くなっていて、いくらでも代わりがいる状態”
“そこで高い評価を得るためには、安く受けるしかない状況になっている”
賃金や労働時間に関する事で言うと、ネットワーカーの人たちに対する規制
というのは、ないのでしょうか?
“基本的に、賃金や労働時間に関しては、労働法の区分けで請け負いは、
正社員・非正規と違って業務委託(自営業や個人事業主)となります”
労働法上の決まり
最低賃金…正○、非○、委託X 労働時間規制…正○、非○、委託X
雇用保険…正○、非△、委託X 育児・介護休業…正○、非△、委託X
労災保険…正○、非○、委託X 割増利用金…正○、非○、委託X
社会保険…正○、非△、委託X
“結果的に、本来は、いろいろ縛られるものがない代わりに、リスクもあります
という事だったと思います”
“リスクはあるまま、生活を成り立たせるために、追い込まれかねない実態に
なっているように思います”
現在は何でもネットになっているので、改善される可能性は、あると思うの
ですが、やはり、雇う側にも問題があるのではないか?
例えば途中で辞めたり、大事な情報をライバル会社が取るなど、使う側にも
問題がある。
よって、お互いに問題を抱えている状態である。
賃金の実態は、どうなっているのか?
ワーカー1,000人を対象にした平均月収の調査です。
専業主婦…73,268円 副業…30,249円 という結果が出ました。
また、80万人の登録者がいる大手仲介サイトでは、月収20万円以上は、
約8,000人に1人という数字もあります。
専業で稼ごうとしている人が増えている中で、これは厳しい数字です。
その、収入が低い現状を、仲介サイトは、どう捉えているのでしょうか?
業界団体に聞きました。
クラウドソーシング協会の事務局長は、言う。
“ワーカーの方々が、たくさんいるので、そこで過当競争になっている”
“そうすると、安い金額でもやって行きます、という方々がいると、発注者の
方が出した時に、低い価格でも大丈夫という形でダンピングに繋がっている”
“事業者として改善して行かないといけないと思っています”
業界側も、低賃金の実態を認識しているようなのですが、改善の方法は
あるのでしょうか?
ジャーナリストは、言う。
“1つは、発注者側も、きちんと評価されるように、仕組みを整えないと
いけません”
“後は、国が一律に規制をかける事も可能とは思いますが、今、政府も、
せっかく市場が立ち上がっている状態で規制をかけるのは、市場を潰し
かねないと懸念している”
政府も難しい判断を迫られているようだ。
ネットワーカーの数が多い海外では、今、働き手が待遇改善を求めて訴訟が
次々に起きているという。
世界中で爆発! ネットワーカーの怒り。
全世界で拡大する、配車サービス・ウーバー。
一般人のドライバーがウーバーのサイト経由で依頼を受け、タクシーのように
人を運ぶ仕組みです。
しかし、今、ウーバーに登録している世界中のドライバー達が、待遇をめぐって
抗議活動をしています。
ドライバーは、言う。
“時給計算すると、最低賃金の遙か下でした”
“家族を養うには、長時間、働かなくてはなりません”
ドライバーたちは、ウーバーに料金やノルマを厳しく管理され、事実上の
従業員にあたるというのです。
こうした訴えは、物流業界の巨人、アマゾンでも起きています。
2015年から始めた、一般人による、アマゾンの配達サービス。
ドライバー募集の謳い文句とは、かけ離れた待遇に、次々と怒りの声が
上がったのです。
ドライバーは、言う。
“いつ来るか分からない依頼を待ってばかり、割に合わないよ”
ウーバーやアマゾンだけでなく、今、各国の企業に対してネットワーカー達が
訴訟を起こしています。
イギリスでは、ウーバーのドライバーたちが、最低賃金や有給休暇といった
従業員の権利を求めました。
2016年、裁判所は、この訴えを全面的に支持。
ウーバーに対し、使用者としての責任を求める判決を下しました。
スタンフォード大学の教授は、言う。
“臨時で仕事を受ける人が、今、急速に膨れ上がり、政府や専門家は、頭を
悩ませています”
“労働法で守り、しかるべき対価を得られるようにするか、フリーランスの
リスクをカバーする、セーフティーネットを作る事が必要だと思います”
日本でも、ネットで仕事を受ける人の権利を守る手探りの取り組みが始まって
います。
自宅で働く、フリーランス・エンジニアの彼は、毎月、安定して、30万円ほどの
収入を得ています。
彼が登録している仲介サイトでは、高いスキルを持ったエンジニアを対象に
時給2,500円を保証しています。
“最初から2,500円という、ある程度、安心できる価格で設定できれば、
(依頼者が)交渉して来て(単価を)安くするという事がないので安心できる”
しかし、専門性の高い仕事に限定されるため、発注は多くありません。
この仲介サイトでは、2,000人の登録者に対し、企業からの求人数は300件と
伸び悩んでいます。
仲介サイトの代表取締役は、言う。
“(企業から)この単価だったら求人を出すのを控えさせて下さい、という
ケースもあります”
“どこまで(企業の数を)広げられるのか?という課題はあります”
一方、立場の弱いフリーランスの人たちが、自発的に連携する動きも始まって
います。
育児をしながら、ライターの仕事を請け負っている主婦。
仕事を通じて知り合った人たちと、チャットを使って、定期的に情報交換して
います。
チャットでの会話。
“向こうが提案して来たものに対して、安いと思うけど、交渉して良いのか?”
“今の世の中の記事の感じからしたら、(相場)1文字3円ぐらい…”
横の繋がりを持つ事で、報酬の相場などの情報交換に加え、共同で仕事を
請け負う機会も増えたと言います。
主婦は、言う。
“こういう時、どうしよう?とか、この案件、大丈夫かな?と、いう事が聞ける”
“安心して仕事を受けられる事に繋がっている”
働き手の側が自分達の権利を訴えたり、守って行かなければならないのか?
ジャーナリストは、言う。
“労働組合が無いような世界なので、ある程度、自分たちで、契約についての
知識を学んだり、交渉力を身に付ける必要があります”
“後は、枠組みとしてスキルアップする機会が設けられていて、認定されると
そこに価格が付いてくる場合があります”
“そういう枠組みを整えて行く事も必要だと思います”
自由でいたい、どこにも所属したくない欲望。
しかし、同じような仕事の出来る人は、何百人どころか、何千、何万人もいる。
それは、国内だけにとどまらず、ネットのおかげで世界中に広まっている。
請け負う人数が増えれば、価格競争が過熱し、止められない価格破壊。
曖昧な線引きで、トラブルも多く、課題が残る。
働き方改革で大手企業は在宅勤務やテレワークを率先して取り入れている。
自由という夢に破れた先は、会社に縛られた雇用に戻るしかないのか?
時代の先を行く働き方に、追い付かない対策。
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