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FC2トラックバックテーマ:「「あの頃は若かったなー」と今思い出すと恥ずかしいエピソード」
シベリアで一獲千金を狙っているボーン・ハンターは、言う。

“長老たちは、行くなと言った。　地獄へ続く道だからと…”

“だが、我々は向かった。　どんな場所なのか、誰も知らない”

シベリアの奥地で、大地が崩壊して行きます。

男達が見下ろす先にあるのは、かつて凍っていた地表が大きく崩落した跡。

地面の底から、不気味な音が響いて来ます。　気候変動の音です。

ロシア極北地方の遊牧民ﾈﾈﾂ人が、トナカイの群れを率いて内陸に向かって
います。　沿岸の牧草地が、雪に埋もれたからです。

長い間、変わる事なく続けられて来た、この旅。

季節の変化に従い、夏の放牧地と、冬の放牧地の間を移動します。

オビ川の河口に着いた時、一行は動きを止めました。

川幅が、数キロメートルにも及ぶ凍った川を、渡らなければなりません。

氷は、十分な厚さになっているでしょうか？

冬の気温は、年を追うごとに高くなっています。　気候変動が、ネネツ人と、
そのトナカイの移動に、影響を及ぼすようになって来ました。

一族の中で、1番、経験豊かな彼が、調査に向かいます。

氷の厚さを何カ所もチェックして、安全に渡れるルートを探します。

ほんの数年前までは、トナカイの群れが川を渡っても、氷が割れる事は、
ありませんでした。　　　“氷の厚さが、25センチしかありません”

“川も湖も全て、以前より、ひと月以上、遅れて凍結するようになりました”

“1980年代や90年代とは、大きな違いです”

“私たちの移動は、1カ月、遅れています。　まる1カ月です”

“出来れば、11月中には渡りたいのですが、12月まで渡れそうにありません”

25センチの氷では、1000頭ものトナカイの重さを支えきれません。

解決法は、ただ1つ。　待つ事です。　気温は、氷点下10度。

氷が十分な厚さになるには、少なくとも氷点下30度の日が、数日続く必要が
あります。　民族学者は、長年、ネネツ人の暮らしを研究しています。

“氷が張っていなければ待つしかありませんが、様々な問題が起きて来ます”

“トナカイのエサの事はもちろんですが、自分たちの群れが他の群れと混ざら
ないように、見張らなければならなかったり、非常に神経を使う事になります”

新たなグループが到着し、待機している集団に合流しました。

トナカイは、気が立っています。

男たちは群れを引き離し、秩序を取り戻す事に時間を費やします。

トナカイはネネツ人の最も大きな財産。家族の生活を保障するものなのです。

疲労と欲求不満が、キャンプ全体に広がります。　トナカイのエサは残り僅か。

一刻も早く出発しなければなりません。

かつて遊牧民は、ツンドラ全域を、自由に移動していました。

しかし今、彼らは、広大な雪原に閉じ込められています。　　　祖母は、言う。

“1980年代には、11月に、氷点下30度の寒波が、やって来ました”

“でも最近は、気温が高い期間が、長くなっています”

“氷点下20度まで下がれば、いい方です。今日は氷点下9度しかありません”

“予報では、氷点下3度の日も、あるそうです”

ロシア北極圏の、この変化を、世界の科学者たちは警戒しています。

民族学者がやって来たのは、世界各国の気候研究者が集まる会議。

シベリアの凍った大地、永久凍土は、気候変動を理解するうえで、非常に
重要なものと考えられています。

しかし、北極圏全体の、ほぼ半分を占めるロシアからは、ごく僅かな情報しか
得られていません。　　　地球物理学者は、言う。

“シベリアは、永久凍土を研究するうえで、必要不可欠な場所です”

“永久凍土の半分以上はシベリアにありますから、それが今、どう変化して
いるのか？　シベリアからの情報なしに、結論を出す事はできないのです”

広大な荒野が広がるシベリア。

手付かずの景色の真っ只中で、大地が変化しています。

“長老たちは、ここは神秘の場所だと言っていた”

“時々、幽霊のような光が、地の底で、ゆらゆら揺れるそうだ”

直径1キロメートルを超える巨大なクレーター。　“以前は、この穴はなかった”

“地面が口を開けると、湧いて来た水が凍土を洗い流して、こうなったんだ”

彼らは、ボーン・ハンター。　シベリアで一獲千金を狙っています。

とけた凍土の中から、数千年前の骨が、姿を現します。

“たくさん見つかったが、ほとんどは、バイソンの牙や骨だね”

“サイの骨も見つけた事がある。　でも、1度だけだ”

“あれ以来、サイの骨には、お目にかかっていない”

“牙は、大体60キロから65キロ。　たまに、70キロの大物もある”

“3年前には、保存状態のいい、大昔の子馬が見つかったよ”

“肉や皮も、そのまま残ってた”

今、シベリアの永久凍土からは、太古の骨だけでなく、何万年もの間、埋もれ
ていた動物の肉や皮など、さまざまな種類の有機物が見つかっています。

これらを分析した研究者は、憂慮すべき問題に突き当たりました。

ウイルス学者は、言う。　　　“これは、全く新しい種類の生命体です”

“シベリアで発見された巨大なウイルス、なんと3万年以上前のものです”

“一般的なウイルスに比べると、直径は、恐らく20倍”

“体積にすると、8000倍という、非常に大きなものです”

“このウイルスが、今、生きて、私たちの研究室に存在していると考えると、
実に恐ろしいと言わざるをえません。　北極の永久凍土はとけつつあります”

“それに伴って、永久凍土の中にあった、さまざまな物質が、次々と地上に
現れて来ています。　仮に、ヒトや動植物に対して病原性を持つウイルスが、
感染力を持つ状態で地上に現れたとしたら、どうでしょう？”

“永久凍土がとけるというのは、大きなリスクを背負うという事なのです”

これを予見させるような事態が2016年、シベリアのﾔﾏﾙ半島で起こりました。

とけた永久凍土の中からトナカイの死骸が見つかり、そこで生き延びていた
病原体が遊牧民に感染し、広がったのです。

‘ここは、2016年に感染症の発生が報告された。リスクが潜在する区域です’

‘ヤマル半島でのトナカイの遊牧に、途方もなく大きな被害を及ぼしました’

民族学者は、言う。

“専門家は状況から見て、炭疽菌による症状だろうと、すぐに判断しました”

“ヒトにとっても動物にとっても非常に危険な病気で、至急、何らかの手を打つ
必要がありました”

炭疽菌(たんそきん)は感染力が強く、僅か数日で、多臓器不全を起こし、死に
至る事もあります。　感染を封じ込めるため、地域全体が封鎖されました。

“1年後の2017年に、感染したトナカイの死骸を燃やした場所で、調査が行わ
れました。すると、その場所から炭疽菌の芽胞(がほう)が、非常に高い濃度で
検出されたのです” (芽胞→細菌の生育環境が悪化した時に形成される
耐久性の高い細胞構造のこと)

“ツンドラのこの区域は、確実に炭疽菌に汚染されていると分かったため、
現在も、立ち入り禁止になっています”

しかし、これは、始まりにすぎませんでした。

‘今回は次元が違います。これは約3万5000年も前のもので、なおかつｳｲﾙｽ
なのですから…’

ウイルス学者は、言う。　“ウイルス、特に新しいウイルスの場合、感染すると
治療は難しく、場合によっては、治療法がない事もあります”

“特に今回、見つかったのは3万5000年も前のもので、当時、どんな環境
だったのか？誰にも分かりません”

“ネアンデルタール人がいたのか？　他の種がいたのか？”

“どういった生物が、このウイルスに感染していたのか？”

“何も分かっていないのです”

“更に、このウイルスは、完全に、未知のものである可能性もあります”

“私たちは、このウイルスについて、一切の情報を持っていません”

“もし、非常に古いｳｲﾙｽで、人類が、これまで1度も接した事がないとすれば、
私たちの免疫システムは、全く働かないという事になります”