FC2トラックバックテーマ:「「あの頃は若かったなー」と今思い出すと恥ずかしいエピソード」シベリアで一獲千金を狙っているボーン・ハンターは、言う。
“長老たちは、行くなと言った。 地獄へ続く道だからと…”
“だが、我々は向かった。 どんな場所なのか、誰も知らない”
シベリアの奥地で、大地が崩壊して行きます。
男達が見下ろす先にあるのは、かつて凍っていた地表が大きく崩落した跡。
地面の底から、不気味な音が響いて来ます。 気候変動の音です。
北極圏の温暖化は、予想より、はるかに速いペースで進んでいます。
海流と風の変化は、測定困難な連鎖反応を引き起こしています。
ロシアの野生生物学者達が、北極海の一部、カラ海の離島に向かっています。
北極の野生生物は、環境の変化を、いち早く察知します。
生物学者たちが注目しているのは、ウエジネニヤ島のゾウゲカモメ。
高緯度の北極圏に生息し、通常は氷河で削り取られた小石だらけの平らな
土地で、繁殖活動を行います。
マリアのチームは、ゾウゲカモメのコロニーを、長年、調査し来ました。
チームは、生息数が急激に減少している事を確認していますが、その原因は
ハッキリしていません。 コロニーの多くが、放棄されています。
古い気象観測所の近くにあったコロニーも、同様でした。
しかし、ここには、僅かですが、カモメが残っています。
奇妙な事に、かつては地上にいた鳥は、屋根の上で繁殖活動をしています。
確認されている限り、ゾウゲカモメが、このような行動をする事は、ありません
でした。 “繁殖に成功すれば、毎年、コロニーに戻って来るのですが、
どうやら状況が変わったようです”
恐らく、それは、捕食動物のせいではないかと考えています。
“ホッキョクグマは、海氷に乗って移動します”
“しかし、海岸の氷が早い時期にとけてしまうと、ホッキョクグマは島に取り
残され、生きるために、そこで獲物を探さなくてはならなくなるのです”
“そこに、2000羽のカモメのコロニーがあったら、どうでしょう”
“ホッキョクグマは見つけたものを全て、卵やヒナまで食べてしまうでしょうね”
“このような事が続けば、カモメはコロニーを放棄してしまいます”
“カモメは、クマに襲われるのを避けるために、屋根の上で繁殖するように
なったのでは、ないでしょうか”
氷で覆われた海が、ホッキョクグマの本来の居場所です。
1番の獲物アザラシは、氷の上からしか狙えません。
春の訪れとともに去って行った流氷は、秋の終わりになるまで現れません。
ホッキョクグマは、以前より長い間、陸地に足止めされるようになりました。
空腹にかられ、食料を求めて歩き回ります。
カモメの卵やヒナだけでは、ホッキョクグマにとって、十分なエネルギーには
なりません。 しかし、他に選択肢は、ないのです。 過酷な環境の北極圏。
ほんの僅かな事が、生死を分けます。
クマたちは、海が再び氷に覆われるまで、何とか生き延びようとします。
中には、よりよい餌場を求めて、途方もない距離を泳ごうとするものも…。
そして時には、足を踏み入れた事のない場所に、辿り着きます。
このクマが、ここに迷い込んだ、いきさつについては想像するしかありません。
工業都市ノリリスクは、海岸から、およそ160キロの内陸にあります。
この町にホッキョクグマが現れた事は、過去に1度も、ありませんでした。
2019年の夏、クマは、ノリリスクの町を、数日間、さ迷い歩きました。
痩せ細り、疲れ果てていました。
海岸に戻っても海は温かく、流氷は見当たりません。
北極海の温暖化の影響は、内陸へと広がって行きます。
人間の住んでいない、この地域でも、問題は起きています。
プトラナ大地の峡谷。 野生のトナカイの移動ルートです。
かつては、ロシア最大の群れが、年に2回、この峡谷を通っていました。
夏には、ツンドラへと北上し、秋の終わりに、針葉樹林帯へと南下します。
トナカイは、何千年もの間、凍った谷底に沿って移動していました。
しかし、川の氷が、とけ始める時期は、年々、早くなっています。
温暖化は、トナカイに、深刻な影響をもたらしました。
薄い氷の上を渡らなければならない場所が増え、移動は氷のとける速さとの
競争になっています。 移動ルートの大部分は、すでに水の中。
トナカイたちは、間もなく峡谷を通れなくなります。
少し前まで、この峡谷は、氷の道でした。 しかし今は大量の水が、すさまじい
勢いで、ツンドラ地帯へ向かって流れています。
水に行く手を遮られ、長距離を迂回しなければならなかった、トナカイたち。
彼らは、貴重な時間を失いました。
夏の牧草地までは、まだ数百キロの道のりが残っており、メスの多くはすでに
子供を産んでいます。
これまで、子供は母親の子宮に守られて旅をし、夏の牧草地に着いてから
生まれていました。
何千年もの間、繰り返されて来たトナカイの生活パターンが、崩れようとして
います。
生存本能に従って、前に進もうとするトナカイたちは、突然、危険にさらされる
ようになったのです。 北極圏の季節は、バランスを崩し始めています。
その原因の1つは、空気中にありました。
タイガと呼ばれる、シベリアの針葉樹林帯。
世界中で排出れる二酸化炭素の多くを吸収し、酸素を放出しています。
森林生態学者は、言う。
“永久凍土の研究者にとって、中央ヤクーチアのタイガは、特別な場所です”
“ここには広範囲にわたって、厚みのある永久凍土が存在しているのです”
活動層と呼ばれる表層部は、夏は氷がとけ、植物が根を張ります。
“土壌の温度など、活動層について、さまざまな測定を行っています”
日本のチームは、土壌の水分量の記録をとっています。
“昨年のデータと、過去10年間のデータを比較してみると、年を追うごとに、
活動層が厚さを増している事が分かりました”
“それだけでなく、活動層の温度は、どんどん上がっています”
夏の間、タイガの土壌は、巨大なスポンジのように、大量の水分を保持して
います。
これが乾燥してしまうと、水分保持能力が失われ、更に雨が降らなければ、
地域全体の水分バランスが崩れてしまいます。
2019年夏、中央ヤクーチアをはじめ、サハ共和国のほぼ全域が、記録的な
水位の低下に見舞われました。
オレニョーク川のような大河でさえ水量が減り、小川のようになってしまいました。
現地の生物学者のチームが、シンリントナカイを探しています。
捜索は、シベリアの奥地にまで及ぶため、川をボートで進むのが、彼らの
いつものやり方です。
しかし、この水位では、ボートが浅瀬に乗り上げてしまいます。 目的は、GPS
信号を送信する首輪を、タイガに生息するシンリントナカイに装着する事。
トナカイが、冬の牧草地に向かう途中で、ここを通るのではないかと考えて
います。 野生生物学者は、言う。
“今年は雨が、ほとんど降っていないので、オレニョーク川に、あまり水があり
ません。 つまりトナカイは、複数のルートを選択できるという事です”
“ボートを使えるだけの水位があるのは、この辺りだけですね”
“ここなら、どの方向も、よく見渡せます”
シンリントナカイは、開けた場所にはいないので、見つけるのは困難です。
少々、乱暴に見えますが、これが1番、うまく行く方法なのです。
首輪は、ネジで固定されます。
これは、およそ1年で、自然に、とれるようになっています。
この日、彼らは、目標とした数のトナカイに首輪を着ける事が、できません
でした。 水位が極端に低いため、これ以上、作業を続ける事はできません。