FC2 トラックバックテーマ:「お家時間をより充実させるために購入したものはありますか?」2017年5月20日。 将棋界を揺るがす大事件が起きた。 ‘負けました’
将棋界の最高峰、名人が、人工知能 = AI に、敗北したのだ。
名人 “正面からぶつかっていって、敗れたと…”
開発者 “コンピューターが名人に勝つという、一昔前では信じられないような
事が、達成できた”
400年以上の歴史を誇る将棋。 プロの棋士がコンピューターに負けるなど、
あり得ないと、将棋界は余裕を見せていた。 (1970年代に将棋ソフト登場)
‘ようやくにして、名人に伍する力ありと、日本将棋連盟殿に挑戦するもので
あります’ “挑戦状、確かに承りました。 いい度胸をしている!”
しかし、想定外の速さで進化して行くAIに、棋士たちは翻弄され、将棋界は
大混乱に陥った。
プロ棋士初の敗北者 “何と言うか… まぁ… 体中に、どっと汗をかいていて
ちょっと体が動かない感じ… あまり、そこ… 記憶がないですね…”
戦いを負い続けた記者 “棋士という職業は、なくなってしまうという、そういう
危機感は、割と、みんな持っていたように思いますね”
AI開発者 “まぁ、いいんじゃないですか? 別に誰かがやらなきゃいけな
かったわけですし… 例え、それが将棋界にとって悪役であっても…”
AIの脅威に、いち早く直面した人間たちが明かす、壮絶なバトルの舞台裏。
淡々と指し進め、無敵の強さを見せつけたAI。 それは図らずも、人間の焦りや
恐怖、一時の感情に左右され、失敗を犯す弱さを浮き彫りにしました。
一方で、全く違う視点から、AIを見つめる棋士がいました。
第3の視点は、あの若手棋士の天敵とも言われる、トップ棋士です。
AIとの出会いをキッカケに、自らの殻を破ったトップ棋士。新時代の旗手として
将棋界を新たなステージへ導く事になります。
AIに光を見い出した新世代棋士のアナザーストーリー。
トップ棋士二冠。 現在の将棋界を代表する1人だ。 あどけないルックスから
放たれる強烈な一手。 そのギャップに魅了される女性ファンも多い。
あの若手棋士二冠に対しても、これまで公式戦、負けなし! 若手の天敵と
呼ばれるゆえんだ。 トップ棋士の強さの秘密。
それは、他の棋士に先駆けて始めた、将棋ソフトを使った研究だ。
“自分の才能が、めちゃくちゃあるわけじゃないと思っていた。思い切った事を
取り入れて行かないと、もう1段、上には行けないような気もしていた。 AIは、
自分にとって先生とか教師みたいな感じに近いですかね”
トップ棋士は、AIから何を得たのか? 人呼んで、恐るべき天才少年!
幼い頃から彼は、有名だった。 プロ棋士の養成機関である奨励会に史上、
最年少で入会。
Q: なぜ、こんなに強くなった? “やっぱり、一生懸命やってたからかな…”
その後、高校生でプロデビュー。 将来の名人と期待されたが… 百戦錬磨の
トップ棋士との対局になると、どうしても勝てない。
“トップレベルの人とかと、たくさん指すようになって、その後なかなかタイトル
戦になると、うまく行かない。 メンタル的なところとか…”
ここ1番の勝負どころになると、ミスをしてしまう。 デビューから7年、なかなか
タイトルに手が届かない。 転機となったのは、2014年。
名人がポナンザに負ける3年前、電王戦に出場した。その後、それまで毎日の
ように通っていた研究会に、彼がパッタリと現れなくなった。
急に、どうしたのか? 仲間たちも困惑した。
“そうですね、最近は、なかなか、お会いする機会がないのでという所です”
“どうしてるかまでは分からないっすね。 いやぁ… ねぇ、分かんないっす。
もしかしたら、もう結婚してるかも知れないし…”
実は、ある大胆な決断をしていた。 電王戦で将棋ソフトの持つ力に可能性を
感じた彼は対人研究を一切やめて、ソフトの研究1本に切り替えたのだ。
“ソフトは割とハッキリ言ってくれるのも、いいところだと思います。人間だったら
そんなに否定…その手はあり得ませんみたいな事は言わないじゃないですか
やっぱり人間関係というか、相手に気を遣う事も多少はある。ソフトは点数で
ハッキリ、この手はあり得ないと言ってくる。そういうのを示してくるので…”
ソフトは、その手が、いいのか悪いのかを、評価値と呼ばれる数値で示す。
彼は、ソフトの評価値を研究し尽くす事で、自分の思い込みを1つずつ壊して
行ったのだ。 とはいえ、それを、うのみにするばかりでは、なかった。
“全部信用してしまって受け入れているだけだと、なかなか…受け身になると
自分の感覚が狂って、おかしな事になる可能性がある。 自分は、こっちが
正しいと思ってて、ソフトは、それは違うと思ってて、でも意外と自分が思い
付いた手を指してみたら、途中で、あの評価値が逆になったりとかして自分の
指し手が認められたケースとかも、ありましたし…ソフトと意見を戦わせるみた
いな事は多かったので、地道に何回も繰り返して…”
AIとの対話を繰り返した彼。 人間とでは得られない新しい手を、次々と身に
つけて行った。 するとトップ棋士たちを相手にしても高い勝率を収めるように。
彼がAIから得たもので、特に大きかったのは、膨大な序盤戦術の知識。
その引き出しが増えた事で序盤では時間を温存し、最後まで粘り強く戦う事
が出来るようになった。 そして、ついに、大1番を迎える。
あの、羽生善治(二冠)に挑んだ、タイトル戦。 2勝2敗で迎えた、最終局。
彼は、序盤で温存した時間を、中盤以降、惜しみなく使う指し方で、ついに、
念願の初タイトルを獲得した。積み重ねた研究の日々が、実った瞬間だった。
‘羽生先生に勝ってタイトル取れたのは、まぁ… 何ていうか現実ではない
ような気持ちもあります。 色々な新しい指し方が出てきて、少しずつ将棋が
新しくなって来ているのかなという風に思います…’
AIと共に新しくなって行く将棋。 プロ入り前からAIを駆使する次世代のスター
も誕生した。 今、彼らはAIを、どう捉えているのか?
初タイトルを獲得した時、あの藤井聡太は、こう答えた。
“将棋ソフトとの対決の時代を超えて、共存という時代に入ったのかなと思い
ます。今の時代においても将棋界の盤上の物語は不変のものだと思いますし
その価値を、自分自身が伝えられたらなという風に思っています”
AIが身近な存在になっても、将棋の面白さは、人間同士が見せる盤上の物語
にある。 2020年10月5日に行われた、トップと若手の6度目の対局。
AI世代同士の戦い。 終盤まで圧倒的な優勢を誇ったのは、若手だった。
形勢は、99%、若手の勝利と伝えられた。 (AIの形勢判断)
しかし、ここで、ドラマが起こった!
解説‘1九銀。これは何か起こるかも知れないですよ。評価値が揺れてますね
これ逆転したら、ある意味、歴史的すごいですよ。たぶん若手もプロになって
から、これほどの逆転は…’ 粘るトップ棋士に対して、若手が犯したミス…。
解説 ‘耳、真っ赤でしょ、これ、若手棋士…’ そして、ついに…。
トップ棋士、若手から6連勝! そこには、確かに人間同士が繰り広げる盤上
の物語があった。
神武以来の天才と呼ばれた棋士 “天才棋士にしても、やっぱり、ほんと、
まれにこんな簡単な手、どうして気付かなかったの?という風な負け方をする
しかもそれで、ずっと生涯、戦い抜くわけですよ。それが人生。つまりコンピュー
ターは多分、大詰め行ったら絶対にミスしませんよ。 そんな、ハッキリ言って
つまんないですよ。 ミスをして全く価値がゼロというのではない。 ミスをして負
ける事もあるけれど、たくましく生涯、戦い抜くというのが我々の世界ですね”
将棋界の最高峰佐藤名人(当時) “地球上で1番強い存在が人間じゃなくなっ
たのかも知れませんけど、ただ、人間の1番の人の魅力というか、まぁ、強さの
魅力というか、そこで残酷ながらも差がつく魅力とか、人間の中での1番という
価値も人間が1番を目指す中で生まれてくる、さまざまなものも何か、どちらも
価値を失っていないように、僕は見えるのですけどね…”
棋士たちの心を翻弄し、将棋界を大混乱に陥れたAI。 しかしAIは、将棋その
ものを進化させ、新たな地平を共に切り開くパートナーにもなりました。
新しいヒーローも、次々登場! 棋士の立場は弱まるどころか、ますます盛り
上がり、AIと共存共栄の道を歩み始めています。
将棋界で起きた事は今、さまざまな業界に広がり私たちの身近でもAIの脅威
が語られる事が増えました。 その時、問われるのは、AIと、どう向き合うか?
人間VS人工知能AI。 その鍵を握るのは、私たち自身です。
千葉県で行われている、将棋教室。 教えるのは、かつてアマチュアのトップ
棋士だった彼。 AIの強さに、いち早く気付き、研究を重ねて来た。
現在、教室はオンラインで行われている。 AIから学ぶ子供たちが増える今、
彼は、あえて人間が教える事に、こだわっている。
“AIには出来ない事とは何だろうという風に考えたのが、教室を始めた大きな
キッカケの1つなのです。 AIが出来ない事というのは、人をモチベートする事
だったり、あえて悪い手を指して人を喜ばせたり、教えるうえで、あえて悪い
手を指して、その子に何かを気付かせたり…”
人間には、人間にしか出来ない事がある… ですよね!