FC2 トラックバックテーマ:「FC2ブログを選んだきっかけは?」‘9人死亡のウイルスは、さらに広まる と、中国当局者…’
世界中の研究者たちが何年もの間、この瞬間のために準備をして来ました。
いつか起こると分かっていました。 ウイルスは、ここから地球の裏側まで、
24時間足らずで到達しうるのです。
研究者たちは、実現不可能に思える任務を背負いました。 世界の命運が
かかっています。 ‘コロナウイルスの世界的まん延は、不可避との懸念が…’
間違いなく、これは悪夢です。
‘新型コロナウイルスのワクチンを、全世界の人々が待ち望んでいます’
これまでもワクチンは、どんな公衆衛生対策よりも多くの命を救って来ました。
ワクチンがなければ、パンデミックを乗り越えられません。
この1年間、私たちは5つの大陸で最前線の研究者たちの奮闘を舞台裏から
取材して来ました。 ワクチンの設計から… 一か八かの臨床試験。
山のような仕事と、それらの重大さ。 プレッシャーは、かなりのものです。
そして大量生産。 冷凍庫は200台ありますが、更に60台、運び込まれます。
ワクチンの開発の成功が見えていないのに、およそ5億ドルを費やしました。
通常、10年から15年かかるといわれるワクチン開発。研究者たちは最先端の
技術を駆使し、いかにして1年に満たない期間で、それを成し遂げたのか?
自分がしなければならない事に集中し、ワクチンを実用化すること以外は何も
考えていません。 ‘このウイルスには、世界規模の対策が求められます’
多くを犠牲にして来ました。 究極のゴールは、このウイルスを地球上から
根絶する事です。 研究者たちが取り組んだのは現代医学の歴史上、最大の
挑戦の1つ。 成功の保証がなくても、やってみるしかありませんでした。
全人類を救うという挑戦。 世界全体を守る事です。
2019年12月30日、北京。 夜の11時頃だったと思います。 武漢で何かが
起きているというニュースをインターネットで見ました。 原因不明の肺炎です。
私は、中国疾病予防センターの主任で、ウイルス学者でもあります。 これは
重大な事が起きていると分かりました。
北京の彼のチームは、すぐに武漢の患者の細胞を手に入れました。 これは
彼らが、それを初めて調べた時の研究室の監視カメラの映像です。
‘これですね。 特徴的な細胞の変化です’
患者の細胞の画像から感染症の権威である主任には、これが何であるかは
すぐに分かりました。 ウイルスです。 しかし、どんなウイルスなのでしょう?
電子顕微鏡で、その答えが出ます。
即座に、この2つを見つけました。 典型的なコロナウイルスです。
主任は2003年のSARS(サーズ→重症急性呼吸器症候群)の流行と闘った苦い
経験から、コロナウイルスが急速に広がって死者を出す死者を出す可能性が
あるウイルスだと知っていました。 これは、SARSなのでしょうか? それとも
新しいウイルスなのでしょうか?
サンプルが手に入ると、すぐにゲノム解析にかかるよう研究員に指示しました。
SARSの時は2~3カ月かかりましたが、今回は数日で終わらせました。これは
驚異的な速さです。 ‘24時間以内に、99%解明できたね’
最新の解析技術のおかげで、これがSARSではなく、非常に、よく似た何かで
ある事が明らかになりました。 主任は、これを世界に伝えます。
私たちは、インフルエンザ・ウイルス遺伝子データベースを通じて、データを
公表する事にしました。1月8日に、これは新型のコロナウイルスだとメールし、
10日の朝、世界に、このウイルスの遺伝子のゲノム配列を開示しました。
ゲノム配列の公開によって、この瞬間のために準備を進めて来た世界中の
研究者が一斉に動き出しました。 中国の主任は、不活化ワクチンを選択しま
したが、他の国の研究者は、全く異なる方法で開発を始めました。
1月10日に情報が公開された時点で、すでに準備は整っていました。 しかも
素早く動く為に、どんなやり方でワクチンを作るかを、すでに決めていました。
妻に、あなたには、こうした事への第六感があると言われました。 全く新しい
ワクチンが必要なのは明らかでした。
ゲノム配列を見て思い付きました。試しにワクチンを作ってみよう。いい宣伝に
なるし、世界を救った気持ちになれると。 でも気付いたら、あっという間に、
本物の開発になっていました。
家族の1人が中国に住んでいたのでウイルスの情報は得ていました。 ゲノム
配列を入手したのは、土曜日の早朝でした。 朝起きると、寝室のパソコンの
前にパジャマのまま座り込み、ワクチンの設計に取りかかりました。
彼女の職場は、オックスフォード大学にあります。 世界有数のワクチン開発
センターであるジェンナー研究所です。 200年以上前に世界初のワクチンを
開発した、エドワード・ジェンナーにちなんで名付けられました。
当時から、ワクチンの仕組みは変わっていません。 ワクチンは感染していると
体に思い込ませるものです。 ですから、ウイルスが実際に感染した状態に
似せる必要があります。
ワクチンを設計する時には、何が感染を引き起こすのかを理解する必要があ
ります。 コロナウイルスの粒子は、RNAという遺伝情報で満たされていて、
その表面はスパイクと呼ばれる王冠状のタンパク質で覆われています。
コロナウイルスをヒトが吸い込むと、このスパイクが気道の細胞に取りつきま
す。 するとスパイクは形を変えてヒトの細胞と融合します。 細胞に侵入した
ウイルスは、複製を始めます。 素早く。
このウイルスのスパイクを、ワクチン開発者は重視します。 その独特な形が
体の免疫反応の鍵となるからです。
通常、免疫反応を起こさせるためには、抗体が必要です。 必要なのは、中和
抗体と呼ばれるもの。 免疫の防御部分のようなものです。
中和抗体はコロナウイルスをブロックし、細胞への侵入を防ぎます。 抗体は
ウイルスのスパイクタンパク質と、しっかり結び付く形となっています。
感染したヒトの血液は、このような抗体で満たされ、これがウイルスを撃退し、
再度の感染を防ぐ働きもします。訓練された軍隊のようなものです。ウイルス
を目にしたら、すぐに飛び出し、戦い、感染を防いでくれます。
2020年1月、主に4種類のワクチンの開発が進んでいました。オックスフォード
大学で開発していたワクチンは、ウイルスベクターと呼ばれるもの。中国から
遺伝子のゲノム配列の情報をもらえば、すぐにワクチンを作れる状態でした。
かぜのウイルスを使うワクチンです。 かぜのウイルスを複製できないように
無害化します。 そして新型コロナウイルスの、ごく一部を取り出し、この一般
的な、かぜのウイルスの中に入れるのです。
このごく一部というのは、コロナウイルスのスパイクタンパク質の遺伝子です。
オックスフォード大学のワクチンは、この遺伝子をかぜのウイルスに組み込み
ます。 これによって私たちの細胞は、スパイクタンパク質を作れるようになり
体が、これを異物として認識、抗体反応が引き起こされます。
新型コロナウイルスの小さな部分を体に入れるだけで、強力な免疫反応を
引き起こすのです。ワクチンは安全性と有効性を確認しなければなりません。
動物実験を行い、次にヒトを対象に、3つの相からなる臨床試験を行います。
最終的には、何万人もの人が参加します。
通常のワクチン計画は、最大10年かかると、いっていいでしょう。 でもそんな
時間はありませんでした。 ワクチンを設計している段階から、臨床試験前の
研究や、第1相の臨床試験の計画を立てました。
オーストラリアの分子ウイルス学者も、すぐにスタートを切りました。クイーンズ
ランド大学の准教授は新しいワクチン研究を始めて僅か1年という時に今回の
パンデミックに遭遇しました。
彼が研究するワクチンは、オックスフォード大学のワクチンと違い、スパイク
タンパク質自体で構成されています。
組み換えタンパクワクチンは、有効性が実証されているワクチンです。 B型
肝炎のワクチンや、一部のインフルエンザワクチンが、そうです。 ですから、
実績のあるワクチンなのです。
最も単純なタイプのワクチンです。 ウイルスの小さな一要素を、アジュバント
(抗体反応を高めるための物質)という化学物質と合わせます。 これを体に
入れて、やっかいな病原体かも知れないから気をつけろ!免疫反応を起こせ
と命令させるのです。
コロナウイルスのスパイクタンパク質をワクチンとして使用する事には、大きな
課題があります。
スパイクタンパク質は、バラバラになって、他の構造の中に入り込みやすい
のです。 そこで、うちではクリップのようなものでスパイクタンパク質を1つに
まとめ、ウイルス表面上にあるスパイク同様、その構造を維持する様にします。
コロナウイルスがヒトの細胞に出会う前のスパイクタンパク質の形状が、最も
強力な抗体反応を引き起こします。したがって、こうした形のスパイクタンパク
質を作り出すため、クリップの働きをする別のタンパク質を追加します。
エイズウイルス=HIVの、ごく小さな断片を使うのです。
なぜ、このタンパク質を選んだかというと、非常に安定した構造だからです。
体内でHIVが増える心配はありません。 使用するのは、HIV内に存在する
タンパク質の小さな断片にすぎないのです。
組み換えタンパクワクチンは、確立された技術なので、安価で容易に製造
できます。 この事は、開発途上国にワクチンを届けるうえで、大事な要素と
なるかも知れません。
ワクチン開発のために雇われたのが、3人。 中心メンバーです。
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義理の父をパンデミックで失いました。 なので、私にとっても家族にとっても
ワクチンの開発が成功すれば嬉しいニュースになります。 私はアフリカ出身
なので感染症の怖さはよく分かっています。だから懸命に取り組んでいます。
みんなが大変な努力をしている姿を見ていると、開発を成功させてワクチンを
届ける当事者になりたいと思います。
2020年2月27日。 世界の感染者数 82,763 死者数 2,814
‘コロナウイルスは、世界中に広がっています。WHOによると、約40カ国です’
この感染症は世界中に広がったので、私は、これまでにないプレッシャーを
感じました。 しかし私は、プレッシャーを、やる気に変えるタイプです。
中国の研究者、センターの主任は、インフルエンザとSARSとの闘いを経て、
従来のアプローチでワクチンを開発する道を選びました。
あらゆる国、あらゆる企業が、自分たちの手持ちの札でワクチンを開発しよう
としています。 このウイルスは、武漢で最初に発見されました。 すぐにウイ
ルスが手に入ったので、不活化ワクチンの道を選びました。
不活化ウイルスワクチンを作る為にはコロナウイルスを化学物質で処理して
ゲノムを傷つけ、複製できないようにします。
その一方で、スパイクなどウイルスの表面構造は、そのままにします。 これを
体内に注入すると、強力な抗体反応が引き起こされるはずです。 スパイク
だけでなく、ウイルスの残りの部分に対する抗体も作られるはずです。
うまく機能すれば、感染を防ぐ力が高まります。 そのためには、まず、バイオ
セーフティレベルが高い施設内で、致死力を持つウイルスを大量に培養しな
ければなりません。
野菜と中華鍋とコンロが揃ったところで、調理に取りかかります。 料理長は、
中国疾病予防センターのバイオセーフティの責任者です。 彼女の仕事は、
中国の不活化コロナウイルスワクチンの種となるウイルスサンプルを培養
する事でした。
さまざまな細胞でウイルスを培養した結果、ある特定のタイプの細胞が、最も
適している事が分かりました。 そこで、この細胞を使って、患者の肺や咽頭
から採取したウイルスを培養しました。 次に、株を選ぶ必要がありますが、
純度が高くなくてはなりません。
2020年初めに主流だった株に最も近いコロナウイルス株を、選ぶ必要があり
ました。 近ければ近いほど、免疫の防御力は向上します。
中国のような不活化ワクチンは、これまで何十年も利用されて来ましたが、
全く新しい方法を選んだのがアメリカ大手製薬会社です。 ファイザーの広大な
研究開発センターは、ニューヨーク州パールリバーにあります。
我が社では、あらゆる種類の感染症に対応するため、ワクチンを開発して
来ました。 毎年、何億回分ものワクチンを製造しています。
彼女は、ファイザーのワクチン研究開発責任者。 650人のチームを率いてい
ます。 彼女の一家は、彼女が僅か2歳の時に東ドイツから脱出し、西側での
生活を始めました。
私は子供の頃、百日ぜきを患っていました。 薬を飲むと、咳が止まるので、
その効果に、とても心を動かされました。 それで、あんなお薬を作る仕事が
出来たらいいなと思いました。 人々の病状を改善する事が出来るような仕事
に就きたいと思ったのです。
彼女は、ドイツの小さなバイオテクノロジー企業と、チームを組みました。
我が社は、2018年からファイザーと、インフルエンザワクチンの開発で提携を
結んでいます。 彼女に電話をして尋ねました。 ファイザーは、うちの会社と
一緒にコロナウイルスのワクチンを開発する事に興味があるか?と。
はい。と即答して、すぐに共同研究を始めました。正式な契約を結ぶ前にね。
ビオンテックとファイザーのワクチンは、これまでヒトへの使用が認可された
事のない、画期的な方法を採用しています。
メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれるものです。
オックスフォード大学のウイルスベクターは、別のウイルス内にスパイクタンパ
ク質の遺伝子を忍び込ませる方法です。一方、ファイザーの場合は、スパイク
タンパク質を作るための遺伝情報を伝える、メッセンジャーRNAを作製。
脂質の保護膜で包んで、体内に送り込みます。 細胞内に入ると、この膜は
破れ、コロナウイルスのスパイクが作られます。 この方法でも極めて重要な
抗体が生まれます。
通常、ワクチンを作るためには、まず細胞を培養して、スパイクタンパク質を
作らなくてはならず、これには何カ月もかかります。 一方、メッセンジャーRNA
の場合、ワクチンを受けた人が、自らスパイクタンパク質を作ります。
つまり、メッセンジャーRNAが、メールのように遺伝情報を細胞内に送り込む
わけです。 指示を終えると、自身は姿を消します。
それまで実績のあったワクチンの開発方法は、全て却下しました。 メッセン
ジャーRNAの魅力は非常に迅速に対応できる事です。 まさに光の速さです。
ただこれまで、このメッセンジャーRNAで作られたワクチンが存在しないため、
恐怖を感じる人もいると思います。
製薬大手のファイザーは、ビオンテックのメッセンジャーRNAワクチンを4種類
試験しました。 すぐに使える巨大な設備、そして原材料も無限にありました。
ですから、資金不足を心配する必要はありませんでした。
アメリカの国立衛生研究所もメッセンジャーRNAワクチンを開発していました。
2020年の初め、ウイルスが世界に広がる中、この研究所は、数歩先を進んで
いました。
うちは、呼吸器感染症の原因となるウイルスを扱った経験があったので、
うまく行くと感じました。 彼は国立衛生研究所ワクチン研究センターの副所長
です。 何十年もの間、ワクチン開発に携わって来ました。
我々は、2019年末には、すでにMERS(マーズ/中東呼吸器症候群)コロナウイ
ルスのスパイクタンパク質を作っていました。 そして、その遺伝情報をメッセン
ジャーRNAでマウスに送り込み、その有効性を確認していました。
彼らは、MERSで磨き上げた方法で、数週間のうちに新型コロナウイルスの
メッセンジャーRNAワクチンを作り出しました。 最初のマウスで、次にサルで
試験して、強力な抗体反応が誘発されるかどうかを確認しました。
この作業を率いたのは、ワクチン開発の第1人者である、34歳の女性です。
これほど迅速に進められたのは、6~7年かけて、全ての準備が終わっていた
からです。 できるだけ早くワクチンを実用化するために、これまで準備して
来た知識を使わない手はありません。
彼女は10代の夏に、グラームの研究室にインターンとして、やって来ました。
後押ししてくれたのは、家族でした。
‘あなたは特別な子よ。 声を聞けるだけで嬉しいわ!’
コロナウイルスに興味を持つ人は意外にも多くなくて…。 でも私は、誰も研究
していない領域に踏み込みたかった。 そこへパンデミックが起こりました。
‘WHOがウイルス拡散の懸念を表明。 中国以外で増えたためです。 大統領
一行は、ワクチン開発者に今後のスケジュールを確認’
2020年の3月初め、アメリカ国立衛生研究所は、最初の臨床試験を僅か数日
後に控えていました。 ワクチンは、パートナーの製薬会社が製造します。
パートナーは、バイオテクノロジー企業のモデルナ。 彼らはワクチンを非常に
速く作る方法を心得ていました。
中国疾病予防センター主任がゲノムの解析結果を公表してから僅か66日後、
アメリカ国立衛生研究所とモデルナのワクチンの臨床試験が始まりました。
シアトルの科学ライターは、第1相臨床試験の治験ボランティア120人のうちの
1人でした。 ‘アメリカ製のワクチンの初の臨床試験が行われています’
これから、1回目の接種を受けに行きます。 ‘臨床試験を支えるモデルナ’
第1相臨床試験では、まずワクチンがヒトにとって安全かどうかを確かめます。
次の目的は、どのくらいの量を接種すれば、適切で安全、なおかつ良好な
免疫反応を引き出せるかを見つけ出す事です。
彼は、最大量を接種されました。 24時間前に、1回目の接種を受けました。
体調は良好です。 腕が痛む以外は、何も症状は出ていません。
治験ボランティアの体調は、しっかりと観察されます。 ワクチンの安全性を
確認するためです。 世界の70億人に免疫を与えようとするのであれば、
ワクチンが長期的な問題を引き起こさない事を、確かめなくてはなりません。
1回目の接種から28日後、科学ライターは2回目の接種を受けに行きました。
夜10時に急に寒気を感じ、ブルッとしました。 そのあと寝たのですが、夜中に
かなりの高熱と吐き気と、びとい頭痛で目が覚めました。 聞いていた症状が
全て出たわけです。 朝5時に緊急外来に行くと、医師が、すでに待機してい
ました。 長い時間、1人でベッドに寝かされました。 自分に何が起きている
のか分からず、怖かったですね。
一部の副反応は、免疫が働いた証拠かも知れません。 とはいえ、防ごうとし
ている病気よりも、有害な副反応が出るのは問題です。 小規模な臨床試験
から始め、安全性を、しっかり確認する必要があります。
ライターの副反応は、モデルナの第1相試験のボランティアの中でも重い方で
したが、2日後に、すっかり回復しました。
こうした試験から適切な接種量が導き出され数百人から数千人を対象にした
第2相、および第3相の臨床試験へと進みました。
オックスフォード大学、ファイザー、中国でも、第1相臨床試験が行われていた
頃、感染者は爆発的に増えていました。
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‘国境知らずのウイルス。 世界規模での取り組みが必要です’
墓が掘られる様子を目にするのは、本当に恐ろしい事でした。ワクチン開発に
取り組む誰もが、最大限の努力をしなければと感じていたでしょう。
2020年5月末には、120以上のチームが、ワクチン開発レースに参加していま
した。 その多くは、政府から莫大な金額の支援を受け、大手製薬会社と
パートナー契約を結んでいました。
クイーンズランド大学がCSL社の支援を受ける一方で、他社も組み換えタンパ
クワクチンの開発を進めていました。 オックスフォード大学は、アストラゼネカ
とともに、ウイルスベクターの開発を進め、他のウイルスベクターワクチンも、
アメリカとロシアで前進していました。
中国は生産拡大に向けて製薬会社シノファームとシノバックの2社と手を組み
ます。 その中でもリードしていたのは、メッセンジャーRNAワクチンでした。
通常は第3相臨床試験を経て、ワクチンの安全性と有効性が確認されるまで
大量生産が始まる事はありません。 しかし、2020年半ばには、世界各地の
工場で、ワクチンを量産する準備が進められていました。
‘世界の人口は70億以上。 全員に接種するワクチンが必要です。 全人類に
免疫をつけるため、複数の製薬会社の成功が必要’
ここは、ミシガン州カラマズーにあるファイザー最大の製造拠点。 彼が新型
コロナワクチン製造の指揮を執っています。これまで、こんな大規模なプロジェ
クトに関わった事はありません。この廊下の長さは500メートルほどあります。
この施設は、かつてない量のワクチンを製造するために、準備を整えました。
製剤能力を高めるだけでなく、検査体制や梱包の体制を変更し、冷凍保管庫
も作りました。 ワクチンの出荷と保管のために、1日におよそ5万4000キロの
ドライアイスが必要になるので、その施設も建設します。 莫大な量です。
この工場、およびファイザーの製造・流通ネットワークを管理しているのは、
製造の指揮を執っている彼の上司です。
ワクチンの製造は施設を作り、世界中の当局から承認を得るまで通常、3年か
ら5年。 9カ月で工場を稼働させ、製品を出荷するなんて信じれませんでした。
ファイザーは、臨床試験の対象となった4種類のワクチンの、いずれにも対応
できるように、3億ドル相当の原材料を購入しました。 結果が出ないうちに、
生産能力を急速に拡大する必要にも迫られました。
ここは、最新の無菌の製造ラインです。 立ち入りが制限され、完全にコロナ
ウイルスワクチン専用となっています。 会社側は必要なものを全て提供して
くれましたし、できうる事は全てやった。 おかげで、スピードが上がりました。
これは、自動目視検査機。 流れて行くバイアルを、15台のカメラで数十回、
撮影し、欠陥がないか確認しています。
メッセンジャーRNAワクチンが無菌のバイアルに充填され、チェックされると、
最終ステップは保管です。 不活化などの他の3種類のワクチンは、科学的に
安定していますが、メッセンジャーRNAワクチンは不安定です。
不純物がない状態のまま低温で保たなければ、あっという間に分解してしまう
おそれがあります。
メッセンジャーRNAのテクノロジーは素晴らしいのですが壊れやすいのです。
そこで、製造したワクチンをマイナス80度で冷凍し、安定させます。
2週間ごとにトラック3台が、冷凍庫を20台ずつ運んで来ます。 現在、ここには
200台の冷凍庫があり、今日、更に60台、運び込まれます。
この施設は、もっぱらワクチンを保管するために建設されました。 ワクチンの
臨床試験が、まだ初期段階にある中、これは大きな賭けでした。
ワクチンの開発の成功が見えていないのに、およそ5億ドルを費やしました。
常軌を逸しています。
クイーンズランド大学の組み換えタンパクワクチンに、オーストラリア政府から
多額の資金が注がれる中、准教授は、昼夜を問わず働いていました。 彼の
ワクチンも、また、第1相臨床試験が進められています。
120人の治験ボランティアがグループ分けされ、プラセボ=偽薬またはワクチン
の低用量・中用量・高用量のいずれかを接種されます。 全員が数週間後に
2回目の接種を受けます。
ヘッドラインニュースでも、その躍進ぶりが取り上げられました。 准教授の
チームが、大規模臨床試験と製造計画を調整する中、第1相試験開始から
数週間で、最初の抗体データが到着しました。
“今、知らせが来て、5マイクログラムと15マイクログラムは、免疫反応レベル
が同じだった。 いいニュースだ”
一刻も早く欲しかったのが、免疫反応のデータです。中用量と低用量は、ほぼ
同じで、低用量の1回の接種で、実際に感染した時と、ほぼ同じレベルの免疫
反応が得られます。 これは、素晴らしい知らせです。
私たちの望んでいた結果です。 チームとしては気分が高揚していますが、
私は疲れ果てています。 前回、ぐっすり眠れたのは、いつの事だったか…。
これほどのスピードでワクチンが開発された事はありません。
眠れないのは、どこかでミスをすると1週間が無駄になり、その間、何人もの
命が失われるからです。 その事が、常に頭から離れません。
2020年7月の終わりには、ワクチン開発の先頭を行くチームが、科学雑誌で
第1相臨床試験の結果を公表し始めました。
‘モデルナは、期待の持てる結果を公表。 ワクチンは安全と思われ、強力な
免疫反応が得られた。 オックスフォード大学は、免疫反応を引き起こすと
語っています。 今のところ良好のようです’
ワクチンが安全で、免疫反応を引き起こす事が分かった時点で、第1項目は
チェック済みとなりました。
彼女は、同僚の免疫学者とともに、オックスフォード大学の研究室で働いてい
ます。 同僚の専門は抗体データですが、彼女はT細胞の専門家です。
ワクチンの大半は、抗体の誘導によって機能しますが、一部の病気では、
T細胞の働きも必要です。
抗体が免疫の防御兵器だとすれば、T細胞は攻撃を行う兵士です。 T細胞は
ウイルスにさらされると精密なハンターになります。感染した細胞を探し出して
しとめる事によって、ウイルスの複製を阻止します。
オックスフォード大学のワクチンの成功は、強力なT細胞の反応を引き起こせ
るかどうかに、かかっていました。 多くの臨床試験参加者のサンプルを分析
しなければなりません。
臨床試験参加者の血液サンプルでエリスポット検査を行います。 エリスポット
とは、ウイルスを認識して攻撃するT細胞の数を、1つずつ数える検査です。
プレート上でT細胞にウイルスのタンパク質の小さな断片を混ぜます。T細胞が
ウイルスに反応すると、底の方に小さな点が現われます。 これがウイルスを
認識し撃退できるT細胞の足跡なのです。反応を待って一晩置いた結果は…
ウイルスを認識できるT細胞があるという事実だけでも、うまく行っていると
思えます。 今回の臨床試験は、他の、どの臨床試験よりも、はるかに多くの
サンプルを処理し、エリスポット検査を行っています。
みんな疲れ果てて週末も働く事が多いのに、もう少し頑張ってと頼まなければ
ならないのは、心苦しいものです。 みんな、すでに十分、頑張って疲れ果て
ているのですから…。
‘オックスフォード大学は、数年かかる作業を3カ月でこなしました。多くの人の
運命がかかる臨床試験です’
失敗できないプレッシャーが大きいのです。 仕事を離れ、たまに日の光を浴
びるのは、いいものです。 なかなか子供たちに会えないので、いつ、お家に
帰って来るの?と、泣かれた時は、つらかったですね…。
ロックダウンが始まってから、両親に会えていませんでした。 母がハイリスク
だったので。 その後、母の病状が悪化し、医学雑誌に発表する論文が、
まとまりかけていた頃、母は病院に搬送され、すぐに亡くなりました。 最高の
瞬間なのに、最悪の気分でした。
長い間、母に会えなかった上に、論文の発表という臨床試験の成果を見せる
事ができなかった。 見たら母は喜んでくれたと思います。 本当に落ち込み
ました。 あれを乗り越えるのは大変でした。 おまけに仕事でも、ツライ事が
たくさんあった時期でしたし…。
2020年7月27日 世界の感染者数 16,490,000 死者数 650,366
‘ブラジルの感染者累計は200万、インドは100万に。米国での1日の新規感
染者数も最多の73,000以上に…’
このパンデミックを制御できそうにない状況を見ると、ガックリ来ます。 私が
正気を保てているのは、朝、散歩して、鳥のさえずりを聞いているからです。
こうして歩いていると、仕事モードから抜け出せて、霧が晴れたように頭が
スッキリします。
モデルナ、オックスフォード大学に続いて、ビオンテックとファイザーも、初期の
臨床試験の成果を発表しました。 彼女は4種類のメッセンジャーRNAワクチン
の中から、1種類を選び、次の段階へと進めます。
‘ワクチン候補のひとつが、抗体とT細胞の反応がよく、有害作用も低いものと
なっています’
あのデータは、かなり素晴らしいものだと思います。 でも繰り返しになりますが
舞い上がっているわけには、いきません。 克服すべき最大のハードルは、
非常に大規模な、後期第2相と第3相の臨床試験です。
私たちは答えなければなりません。 ワクチンは、本当に効果があるのか?
という問いに。
最終段階の治験へと進むワクチン開発。 しかし、完成までには、さまざまな
壁が立ちはだかる。 しのぎを削るアメリカ・イギリス・中国・オーストラリア。
リードするのは、どの国なのか? そしてワクチン開発後も続くコロナウイルス
変異株との闘いは?
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未知のウイルスと戦う、人類の成長を描いたミクロファンタジー? 人類と
新型コロナの2年以上続く戦い…。 ワクチンを打った後に出る副反応。
でもワクチンって、どんな効果があって、体の中で何が起こっているのか?
よく分かっていなかったりしますよね?ちなみに今回の新型コロナワクチンは
ものスゴイ技術が使われているという話なのですよ!
2019年の年末に始まった、新型コロナウイルス感染症。 世界中で5億人を
超える感染者を出す、パンデミックを引き起こしています。
日本でも生活は一変! ホント絶望的な状況でしたよね。 そんなコロナ禍で
人々の希望となったのが、新型コロナワクチン。
臨床試験の結果、90%以上の高い有効性をたたき出して、開発から僅か1年
足らずという、ものすごいスピード感で承認・実用化されました。
実は、この新型コロナワクチン、これまでのものとは全く異なる新しい技術が
使われているのです!
それはメッセンジャーRNAと呼ばれているものにヒミツがあって人間の細胞が
ウイルスと戦うタンパク質をつくるという、もぉ~、これがスゴイのです!
それで感染を抑える、いわば、ワクチン界のニュータイプ! このワクチンの
登場は本当にセンセーショナルで、ノーベル賞級の発明だ!と賞賛する人も。
コロナ以外にも、インフルエンザワクチン、ガンや、アレルギーの治療薬にも
応用できると期待され、世界中で臨床試験がヒートアップしているのです。
通常のワクチン開発は10年以上かかるそうなのですが新型コロナワクチンは
僅か1年で承認! それゆえ、安全性を心配する声もありますが、実は開発の
裏には、40年にわたる科学者の研究があったのです。
その誕生秘話と、mRNAの正体を見て行くと、医療の最前線と未来が見えて
来ちゃうという話なのです。 とにかく、mRNAを医療に応用する道を切り開いた
科学者の話が、めちゃくちゃ面白いのです!
ハンガリー出身の科学者カタリン・カリコ(女性)。 新型コロナワクチン開発の
裏には、カリコが逆境に負けず、コツコツとmRNAを研究し続けた、うち、何が
あっても、へこたれへん!的な、ど根性物語があったのです。
小さい頃から動物や植物観察が大好きで、父親がブタをさばくのを、じっと
見みちゃうくらい、狂おしいほど生命に興味があったカリコ。 高校生の時には
科学者になる!と決めたのだそう。
大学卒業後、ハンガリーの生物学研究所で研究していたのが、遺伝物質
mRNAを含む RNA の研究。 人間の体には、およそ37兆個の細胞があって、
その1つ1つの中で、DNAとRNAが働いている。
例えば、細胞の中を漫画雑誌、週刊ナヌーンを作る世界だとします。 すると
DNAが漫画家先生。 先生が描いた原稿をデータ化して、印刷用の完成
原稿をつくるのが、RNAたち出版社の社員なのです。
社員には、部署ごとに仕事がいくつかあるのですが、印刷工場に完成原稿を
届けるのがメッセンジャーRNA。 ちなみに完成した漫画雑誌がタンパク質で
体の中の書店やコンビニに配送されるのです。
え? 分かったようで、分からない? でも、次行くね! 当時、研究が進んで
いなかったRNAは、未知の存在だったのです。
カリコは、この働き者の彼らを、医療に役立てたいと夢見ていたのだとか。
そんなカリコに30歳の時、大きな試練が立ちはだかる。 ハンガリーの経済が
行き詰まり、突如、研究費が打ち切られてしまったのです。
でも、困難は次のステップにつながると、RNAの研究を続けるため、カリコは、
家族と共にアメリカに渡る事を決意したのです。
その後、カリコは別の研究グループがmRNAを挿入して、特定のタンパク質を
つくる指令を出させる事に成功した事を知る。
これって、別の印刷用の完成原稿を持ったmRNAを、印刷工場に向かわせて
勝手に別の漫画雑誌をつくれちゃったという事なのです。
カリコは、この技術を使えば、脳卒中や心臓バイパス手術など、医療の役に
立てるかも知れないと大興奮したのです。
ところが、この研究成果は、科学者の間では、全く、見向きもされなかった。
mRNAは分解されやすく、すぐ消えるから面倒臭いRNAと、あだ名で呼ばれる
くらい、薬に使うのは難しいというのが、常識だったからです。
でもカリコは、その性質から、mRNAは体内に長く残らず消えるので、医療で
プラスに働くはず!と、短所を長所と考え、またしても、へこたれへん!と、
研究を続けた。
そして1997年、カリコは免疫学者のドリュー・ワイスマンと、運命的な出会いを
果たす。 HIVワクチンを開発したいんだけど、DNAだと、うまく行かないんだと
悩むワイスマンに、カリコは、RNAなら出来るわよ!と断言。
意気投合した2人は、mRNAの共同研究を始めたのだが、治療薬にするには
大きな壁があったのです。 なんと、人工のmRNAを細胞に加えると、細胞が
拒絶反応を起こし、細胞が死滅してしまうのです。
人工のmRNAを、長くしたり、短くしたり、形を変えたりしたけど、無駄、ムダ!
そこで細胞に、もともとあるRNA、つまり出版社のそれぞれの部署から社員を
外に呼び出し、改めて細胞に入れてみたのです。
すると、トランスファーRNAと呼ばれるものだけが、拒絶反応を起こさずに、
細胞の中に入る事が出来たのです。 どうしてと思いますよね?
カリコが、tRNAを顕微鏡でのぞくと、tRNAは化学修飾と呼ばれる、おめかしを
していたのです。 (化学修飾=細胞が自分のRNAだと認識する飾り)
一方、mRNAは、運動しやすい服装だった。 カリコは、ひらめいた!
ひょっとして、外から細胞の中に入る時は、ドレスコードがあって、おめかし
していると、ステキ!と言われて、拒否されないのかも!
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そこで、tRNAばりに、mRNAを、おしゃれ番長化。 これがビンゴで、人工の
mRNAでも、おめかしをキメれば、細胞の中に入る事が出来て、思い通りに
タンパク質をつくる事に、カリコは成功したのです。
このカリコの研究に注目したのが、ガン治療薬の開発でmRNAを研究していた
ドイツのビオンテックのCEO。 カリコはビオンテックで、mRNAを使った、ガン
治療薬や、インフルエンザワクチンの開発に着手。
アメリカなどで臨床試験をスタートさせるところまで行ったのです。 そうした
状況の中、2019年12月。 人類の前に突如として最悪の悪魔がやって来る。
新型コロナウイルス COVID-19。
未知のウイルスを恐れた僕らの生活は一変し、街から人が消え、日常が
失われて行きました。 カリコは、中国の研究者から公開された、新型コロナ
ウイルスの遺伝子配列を見て、mRNAが、この緊急事態を解決する手立てに
なるかもと、ワクチンの開発を始めたのです。
新型コロナの感染は、ウイルスの表面にある突起タンパク質が、人の細胞に
くっついて侵入して起こる。 つまり、この突起タンパク質を、やっつけちゃえば
感染しないという事。
そこでカリコは、突起タンパク質の遺伝情報だけを取り出してコピーした、
大量のmRNAを使って、人の体内に新型コロナウイルスの抗体をつくろうと
考えたのです。
そうして出来たmRNAなのですが、注射すると、僕らの体の中で何が起こって
いるのか? ちょっと忘れちゃったかも知れないけど、漫画出版社の設定で
話をさせてね!
体の中に送り込まれたmRNA。 手には漫画雑誌、突起タンパク質物語の
印刷用の完成原稿。 印刷工場に持ち込むと、次々と漫画雑誌が印刷されて
細胞の外に出て行くのです。 そこで待っているのが、免疫細胞。
人呼んで、ウイルス・バスターズ! この子たちは、漫画雑誌を手にすると、
特殊な力を発揮するのです。 B細胞は、突起タンパク質物語の理不尽さに
怒り、抗体という銃弾をつくるスナイパーと化す。
樹状細胞は、突起タンパク質物語が、めちゃくちゃつまらないとビラをつくって
仲間に配る、いわば、ネガキャンインフルエンサーです。
キラーT細胞は、ネガキャンのビラを受けり、突起タンパク質物語を見つけたら
全力で排除する事を心に誓う。
でね、いざ、新型コロナウイルスが体内に侵入すると、どうなるのか?
イメージすると、突起タンパク質物語を、大量に抱えてやって来る。
それに対して、まずB細胞が抗体で狙撃。 弾幕をくぐり抜け、細胞に、突起
タンパク質物語が持ち込まれても大丈夫! キラーT細胞が、細胞ごとせん滅
する。 こうして、新型コロナウイルスの増殖を防ぐという仕組みなのです。
ところで、この免疫細胞にウイルスと戦う力を授けた、mRNAは、どこに行った
かというと、2~3日で役目を終えて、ひっそりと分解して姿を消すのです。
何だか、はかないですよね~。
この新たなワクチンの開発を目指すビオンテックは、アメリカの大手製薬会社
Pfizer(ファイザー)と提携。 大規模な治験を行うとともに、大量生産が可能と
なり、僅か1年足らずで実用化され、新型コロナワクチンを世界に供給した。
カリコは、私は貢献しましたが、私のワクチンではありません。学術界、小さな
バイオテクノロジー企業、大企業のそれぞれがベストを尽くして協力し合った
結果。 …と言ったらしいけど、ホント、科学者たちの長年の苦労が実った
結晶だよね!
カリコの功績は世界でも高く賞賛され、mRNAワクチンは、ノーベル賞級の
発明!だといわれている。 でも、副反応やブレイクスルー感染など、mRNA
ワクチンに対して懐疑的な声もあるのが現状。
その安全性と問題点は、どうなのか?日本のmRNAワクチン研究の第一人者
に聞いてみた。
“副反応で痛い、腫れる、赤くなる、熱が出るというのは、ある意味、主反応に
近いものです。 いわゆる、風邪をひいた時の免疫反応に近いものなので、
どれが…何が完全に悪い反応ではないのです。 ただ、それがひどすぎると、
副反応と言えず、副作用として後に残ってしまう事もある。 そこは、きちんと
分けて。 あまりにもひどければ、お医者さんに診てもらうのが大事です”
Q: mRNAワクチンの問題点は?
“いろんな大事な試験をスキップしたのではないかとか。 副作用のことを、
ちゃんと見過ごしたのではないかと言われますけど、いやいや、必要な試験は
全て終えていて。 ただ残念なのは、ワクチン接種が始まって2年経ってない
という事から、長期にわたる副作用とか副反応、影響というのは、まだ見られ
ていない状況で、必ずしも、もろ手を挙げて安全だという事は、まだ言い切れ
ない状況です”
いろいろ不透明な問題も山積みだけど、mRNAは、今までの感染症用の
ワクチンに比べ、時間とコストが格段にかからない、革命的なイノベーション
になるともいわれている。
そして何と言っても、mRNAワクチンがスゴイのは、B細胞が抗体をつくるだけ
ではなく、キラーT細胞の力を覚醒させ、細胞に潜むウイルスや悪い細胞を
やっつける事。 これって、今までのワクチンでは無理だったのです。
そのためmRNAは、ガンの治療や遺伝子欠損、免疫不全などの難病治療に
応用できると期待され、開発研究が進んでいる。
日本でも、mRNAを使った新型コロナワクチンを開発中! 年末には、国産の
ワクチンを打つようになっているかも知れません。 最新の医学によって僕らは
新型コロナウイルスによる危機から抜け出しつつある。 その裏には、1人の
研究者が情熱を持ち、諦めずに研究を続けた歴史があった。
果たして今後、mRNAは、僕らに何をもたらすのか? 期待しつつ、この技術と
どう向き合って行くのか? 考える事が大切なのかも知れません。